つきあって
今日、つきあってって『彼』から言われた。
『彼』は私の前でとても緊張していて、つられて私も緊張してしまった。
それに男の子から『告白』されるのって、初めての『体験』だったからすごい戸惑ったし、すごい嬉しかった。
だけど、その時はすぐに『返事』はできなかった。
戸惑っていたしどういう風に言えば良かったか、わからなかったから保留にしてもらった。
『彼』は困惑していた。
でも、でもね……実を言うと迷っているんだよね。私。
もちろん『彼』はとても優しい人で、とてもカッコいい。
『彼』に初めて出会った時、思わず目の前がバラ色になったっけ。
『告白』されて、嬉しかった。
けど『彼』には容姿とか性格云々よりも、もっと他に重要な問題があった。
そう、それは……
ーコツン。
自分の部屋の窓に小さな物が、ぶつかった音が響いた。
机に向かって考え事していた私は震えた。
ーコツン、コツン。
『何か』を誇示している様にどんどん窓にぶつかってくる。
私は小刻みに震える自分の両肩を両腕で抱いた。
音はまだ続いていく。私はそれに気づいてないフリをして目を固く閉じる。
それが一瞬、止まった。その途端に私の右肩に手が乗った。
「ヒャ……ッ!」
私は悲鳴を上げて反射的に後ろを振り向いた。
「……あ、ぁ……っ」
「ごめんねぇ、ついてきちゃった。」
そこには悪気もなく『彼』がいた。私は信じられない様に目を見開いた。
「な、なんでっ!」
『彼』はここまでついてこられないはずだったのに。
どうして、ここに!
「君への想いが強すぎたんだね。もう僕にはどうにもならなくてさ。」
私の視線を受けて『彼』が笑った。
「だからねぇ?つきあってくれるよね?」
パシッ、パシッ!『彼』が話す度に生木をさく様な音が部屋中に響いた。
イヤだ……私は無言で首を横に振った。
「僕はずっと君を見てた。君しかいない。」
すーっと動けない私の両頬を両手で挟んで『彼』はまた、笑った。
「君を連れて行く。」
「うっ、」
『彼』の両手がそのまま首筋にすべり下りていくと、ぎゅっと締めた。
その息苦しさに私は必死でもがいた。目の前をチカチカと星が飛ぶ。
「もがいてもダメさ。君は魅せられたんだから!」
息苦しさと涙でかすむ目を見開いて私は『彼』を見た。
そこに素敵な『彼』はいなかった。
そこには左頬を醜く爛(ただ)れさせ、ボロボロに破けた服を着ている『幽霊』がいた。奇妙にその口元を綻ばせて骨や肉を見せている腕で、私の首を絞め続けている。
一瞬、気を失うのを堪えながら私は声にならない声で叫んだ。
ダレカ……ダレカ、……タスケテ……!!
その後は、