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超絶勇者ブレイブマン その17

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「ぬわぁ! な、なんだよ、これ!?」
 突然の奇声が教室中に響き渡り、帰り支度をしていた生徒たちも手を止めて、そちらに目をやった。見れば、希望がロッカーの前で座り込んでいる。
「どうかしたのか? そんなお化けでも見たような声を上げて」
「見ろよ、これ! 翼の部分が折れちまってる!」
「翼?」
「タッキー?」と、勇気と愛が様子を窺った。そこには、無残にも翼の折れたデスティニーガンダムがあった。
「落としちゃったの、それ? 私はもう十分堪能したし、自分のじゃないから別にいいけど」
「俺が落としたんじゃねえよ。このロッカーにしまう前には確かに壊れてなかったし……」
 希望にしては珍しく思案顔で何かを考えているようだった。そして、不意に立ち上がり、正義が座る席の前に立った。
「あ? なんだよ。俺もう帰るんだけど」
「そうやって、さっさと逃げ帰るつもりだったのか?」
「言いたいことは大体分かるけどよ。全くの見当外れだぜ」
 ふたりは睨み合い、火花を散らした。一連の流れを見ていた可恋は、一触即発の雰囲気にオロオロしている。
「あの、ふたりとも、クラスメイトなんだし、仲良くしよ……?」
「こんな奴と仲良く出来っかよ! 一目見たときから気に入らなかったんだよ。
 その上、今度は俺が一生懸命作ったガンプラを破壊しやがった! もうこれ以上我慢出来るか!」
「誰がそんなことすんだよ。変な言いがかりつけるのはやめろよ」
「待てよ、希望。正義の言う通りだ。何か証拠でもない限り、ただの言いがかりだぞ」
 憤る希望を勇気と可恋はなんとか宥めようとするが、完全に頭に血が上っていて逆効果であった。希望は語り出した。
「ふん。なら、順番に説明してやるよ。俺だって何も考えずに、こいつが犯人だと言ってるわけじゃないってことをな。
 まず昼休み、俺はお前たち4人にガンプラを見せた。もちろん、このときガンプラが壊れてはいなかったのはお前たちも確認している。
 そして、俺が青い布に包み、教室に持ち帰ったことを知っているのも、俺を含めて5人だけだ。
 教室のロッカーにしまったあと、すぐに先生が来て授業が始まった。その授業のあとは、体育の時間だった。
 男子は正義を除いて全員運動場へ向かったし、教室に帰ってきてからは俺はロッカーの見える範囲でお喋りをしていた。
 つまり、俺のロッカーに近づき、ガンプラを破壊できたのは、体育の時間が始まる直前から終わる時間までしかない。
 その間、アリバイが存在せず、俺のガンプラの存在を知るのは正義しかいないだろうが!」
「それで俺が犯人だと? 馬鹿馬鹿しい。寝言は寝て言えよ」
 正義は反論するが、これまた珍しく希望にしては筋の通った論理であった。馬鹿馬鹿しいと言いながらも、正義は自分が犯人ではないと証明するのは難しいと考えていた。
 教室は一瞬静まり返った。だが、それは嵐の前の静けさであることを、その場に残っている生徒たちは感じ取っていた。そんな中、ひとり考えを巡らせる少女がいた。
「……駄目だね。全然駄目だよ。そんなんじゃ、なんの証明にもなってないね」
「あ? 何が駄目なんだ。正義なら、体育の時間中に教室に忍び込むことができたはずだろ」
「異議あり!」
 数々の推理ゲームをプレイしてきた少女、佐藤愛は左手の人差し指を突きつけながら叫んだ。それはまるで、ツンツンヘアーの弁護士のように。こうして、わっくわくのどっきどきな学級裁判が始まった――。