小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

超絶勇者ブレイブマン その14

INDEX|1ページ/1ページ|

 
 その日の1限は英語の授業であった。英語教師の織部はまだ教師になって2年目で、比較的生徒とも年が近いため、人気がある。その織部が黒板に例として英文を書いた、そのときであった。
「せんせー、そこのスペル間違ってまーす」
 そんな風に生徒から指摘があるのは別に珍しいことでもない。英語教師と言っても、スペルの書き間違いをすることくらいはある。
 ただ、その指摘をしたのが今日転校してきたばかりの正義だったため、織部は少し面食らってしまった。
「ああ、そうか」と言いつつ、スペルミスを訂正しようとすると、続け様に正義は指摘をした。
「あと、さっきから聴いてて思ったんすけど、先生の発音ってまさに日本人の発音って感じで、聴いててこっちが恥ずかしくなるんですけど。
 というか、外人の英語教師とかいないんですか? こんなんで英語が話せるようになったら天才ですよ」
 これにはさすがに織部を顔を真っ赤にしてしまったが、そのあと教科書を音読するように指名したら、本当に英語が母国語かのような発音だったため、まるで面目が立たなかった。
 その授業のあと、好奇心旺盛な生徒の内の何人かが正義を取り囲み、質問攻めにした。どこから引っ越してきたのかとか、趣味は何かとか、いろいろ訊かれていたが、正義は適当に答えるばかりであった。
 そんな中、ひとりが「さっきの英語の発音、めちゃくちゃ上手かったけど、どうやって勉強したの?」と訊いた。
「別に。ただ、ちょっと留学してたことがあるだけ」
「へー、留学なんてかっこいいね。どこの国に留学してたの?」
「どこだっていいだろ。めんどくさいな。どうせ物珍しさで訊いてるだけで、俺のことなんか興味ないくせに」
 その正義の言い方は当然反感を買った。主に女子に。
「ちょっと、なんなの、その態度! 私たちはただ質問してるだけじゃん」
「だから、それがめんどくさいって言ってんだよ。もう誰も俺に話しかけんな」
 そこまで言われてしまっては、取り囲んでいた生徒たちももう誰も正義に話しかけようとはしなかった。
 昼休みの時間になった。誰も正義には近寄ろうとせず、それどころかひそひそと陰口を言う声さえ聞こえてきた。
 正義は鞄から弁当箱を取り出しながら思った。どうせ遅かれ早かれこうなるんだ。だったら、最初から嫌われている方がマシだと。
「せいぎくん」
 ふと声がした。正義は自分に対する呼びかけだとは思わなかった。
「ねえねえ、せいぎくんってば!」と腕を掴まれ、初めて自分のことだと分かった。
「何……? せいぎくんって俺のこと? 俺、せいぎじゃなくて、まさよしなんだけど」
「うん、知ってるよ。でも、せいぎとも読めるよね。あだ名で呼ばれるの嫌い?」
「嫌いとかじゃなくて、いきなりなんなのさ」
「あ、そうだよね。私、自己紹介してないもんね。佐藤愛です。これからよろしくお願いします」
「いや、そういうことじゃなくて……」
 なんなんだ、この女は。正義は率直な感想としてそう思い、ため息を吐いた。
「それでさ、これからあっちのみんなと屋上でお弁当食べるんだけど、せいぎくんも一緒に来ない?」と、愛は弁当箱を片手に、反対の手で3人を指差しながら言った。
「なんで?」
「ほら、転校してきたばかりだから、校内のこともよく分からないでしょ? 案内がてらにどうかなと思って」
「いや、別に。俺、そういうのいいんで」
「本人が嫌がってるんだから、無理に誘わなくていいだろ。ほっとけよ、そんな奴」
 やや離れたところで、勇気、可恋とともにいる希望が言った。
「希望くんは黙ってて! ね、あんなのもいるけど、行けばきっと楽しいから、一回だけでもさ」
 愛は半ば、――いや、完全に強引に正義の腕を引っ張り、屋上へ連れて行こうとした。正義にとっては迷惑極まりなかったが、どこかで期待する気持ちもあった。もしかしたら、生まれて初めて友達ができるかもしれないと。