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超絶勇者ブレイブマン その13

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 翌日の月曜日。その日は朝から眠かった。勇気と愛にとっては。
 ふたりで欠伸をしながら、可恋に朝の挨拶をした。可恋は昨日の帰宅後、ゆっくり眠れたようでいつもと変わらない様子であった。
「おはよう。珍しいね、勇気くんが眠そうにしているなんて」
 それはつまり、愛が眠そうにしているのは珍しくないということであったが、紛れもない事実であるため、愛は特に何も言わなかった。
「俺は、ほら、剣道部の朝練があったしさ。愛ちゃんとはさっき、廊下でたまたま出会って」
 本当は朝練のせいと言うよりも、昨日の考え事で眠れなかったせいなのだが、それを言えば考え事をさせるようなことを言った愛が悪いということになるため、勇気は気を遣った。そこにもうひとり眠そうな男がやってきた。
「よう。お前ら、眠そうな面してるな」
「はいはい、おはようおはよう。希望くんに言われたくないよ」
「俺はお前のためを想って、最後の仕上げをやってたんだよ」
「は? 何それ? というか、私だっていろいろあってから、勇気くんの道場に行って、帰ってから授業の予習して、撮り溜めしたアニメを観ながら漫画を読んで、深夜2時までネトゲしてたから大変だったんだよ」
「いろいろあっての部分がよく分からんが、ほとんど自己責任じゃねえか」
「過労死も自己責任の時代かあ」
「愛ちゃん、話が変な方向に行ってるって。それで、一体なんの話なんだよ、希望」
 勇気は愛を制止しながら、希望に訊ねた。しかし、希望は「お前も覚えてないのかよ」と言いたげな様子であった。
「ガンプラだよ、ガンプラ! 先週の金曜日に話しただろ」
「あ、そうだった! 今ので眠気覚めたよ。早く見せてよ。ハリー、ハリー!」
 伸ばした両腕で机をバンバン叩きながら、愛は激しく主張した。やはりオタク的な話になるとうるさくなる。
 しかし、これで教師からは、愛は優等生で、希望は落ちこぼれという扱いをされているのだから、希望が納得いかないのも無理のない話であろう。
「まあ、落ち着けって。もうすぐ始業のベルが鳴るし、昼休みになったら見せてやるよ。それに噂じゃ今日は転校生が来るらしいから、朝はその話題で持ちきりになるだろうし」
「転校生? そんな話聞いてないよ」
「だから、急な転勤でもあったんだろ。ほら、もうベルが鳴るぜ」
 キンコンカンとベルが鳴り、みんな席に着いた。それでも教室の一部では雑談をする声がしたが、担任の教師が来ると、すぐに静かになった。
「えー、それでは、日直の木村くん。朝の挨拶をお願いします」
「きりーつ! 礼! おはようございまーす!」
 元気のいい声のあと、クラス全員で「おはようございます」と発声した。そのあと、日直の「ちゃくせーき!」の声とともにみんな着席した。
「さて、もう知ってる子もいるかもしれないが、今日はこのクラスに新しい仲間が加わります。花道くん、教室に入ってきなさい」
 先生は廊下の人影に向かって声をかけた。すると、気だるそうな少年が制服のズボンポケットに手を突っ込みながら入ってきた。
 制服はまさに新しく買ったばかりという感じだったが、首元を開けシャツをズボンの外に出していたので、だらしなく見えた。
「なんだ、美少女転校生じゃないんだ」
 愛は小さな声で呟いたが、両隣の勇気と可恋の耳にはばっちり届いていた。とは言え、目の前の少年も、美少年の部類には入ると思うのだが。
「では、まずはみんなに自己紹介をしてください」
「あー、花道正義(はなみちまさよし)です。まあ、適当によろしく」
 いかにもやる気がなさそうな挨拶だったが、中学生以下の学生にとって転校生が来るというのは、それだけでも一大イベントなのだ。クラス全体が歓迎のムードに包まれていた。
「花道くんのお父さんは実に忙しい人で、全国を飛び回っているそうだ。今回もそのお仕事の都合で転勤となったらしい。では、皆さん仲良くしてあげてください」
 先生にそう言われるまでもなく、みんな早く正義にいろいろ質問したいという気持ちでいっぱいだった。だが、しかし、このあとすぐに、その気持ちは急速に冷えていくことになるのであった。