クイズです
「どうしたい。アルミホイルについた飯粒食おうと思って、飯粒じゃなくてアルミホイルの方を、思い切り噛み締めちまったような顔をして……」
「……そんな顔してるかい? 明日のお弁当のおにぎりは、ラップに包んでもらおうっと」
「さては、明日のバス遠足、隣に座ってくれる人がいなくて、運転席に座ることになったな……」
「そんなわけないだろっ。いや、実は、明日、バスの中で、出しっこするクイズが思い付かなくて困ってるんだ」
「なんだ、そんなことか、じゃあ、一緒に考えてやろう」
「ありがとう」
「じゃあ、こういうのは、どうだ。とてもありえない怪物を言って、『この動物なーんだ?』って言うんだ」
「えーっ? 何それ? 答えは?」
「『そんな動物、イルカっ?!』ってな」
「なるほど、じゃあ、いくよ。『目が4つあって、牙が6本あって、翼があって、水かきがあって、【名残り雪】を大ヒットさせた動物はなーんだ?』」
「……これやめようか。お前、本当に小学生かい?」
「そう?」
「じゃあ、スリー・ヒント・クイズってどうだ?」
「スリー・ヒント・クイズ?」
「そう」
「例えば、ヒント1、それには、スピーカーがあります」
「そんなもの、たくさんあるよ」
「慌てなさんな。ヒント2、それには、マイクがあります」
「んん?」
「ヒント3、それには、タッチパネルがあります」
「スマートフォンだ!」
「まぁ、今のは、簡単な奴だがな」
「……よし、できたよ」
「お、もうできたのか」
「ヒント1、それには、ダイヤルがあります」
「なかなか良い切り込みだな」
「ヒント2、ラケットも使います」
「えっ? ぉぃ、大丈夫か?」
「ヒント3、漫才師です」
「はぁ?!」
「答え、中田ダイヤルラケット」
「そら、中田ダイマルラケットやーっ! って、古すぎじゃ、お前本当に小学生か?!」
「だめ?」
「小首を傾げて誤魔化せる範囲を超えてます」
私は眉根を揉んだ。
「普通のなぞなぞで良いんじゃないか?」
「普通のなぞなぞ、って?」
「うーん、『パンはパンでも食べられないパンは?』」
「ショパン」
「いや」
「あ、生物である以上、その気になれば食べられるか」
「いや、その気になるな、正気を保て……。じゃあ、『寺は寺でも食べられる寺は?』」
「バッテラ」
「上は大水、下は大火事」
「コンロのヤカン」
「そうだよなー、今、風呂釜って、大抵、横にあるよなー」
私はガックリと膝をついた。
「お父さん、どうしたの?」
「いや、もう、お父さんには、お前に教えることは何もないようだ」
「えっ、待ってよ、お父さん、一緒にクイズ考えてよ」
「答えはお前の中にある。さらばだ。はーっ、はっはっはっ」
今は去ろう。残された息子の成長を信じて。