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悠里17歳

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8 NAUGHT



 時計は日付が変わるから変わらないかのまどろみの時間帯、数学の予習が終わらずに参考書片手に、ノートにはいつまでも解にたどり着かない数式が徒らに続く。英語はきょうだいの教えで人よりは理解できるが、数学は苦手だ。
 私には11歳年上の姉と5歳年上の兄がいる。姉は嫁ぎ、兄は東京の大学に進学したので今は一緒に住んでいないけど、二人とも私が生まれる直前の6年間は父の故郷であるアメリカで生活していたので、同じきょうだいでも私とは年齢差以上に育った環境も受けた教育も違ったところがある。だけど私たちは日本の社会においては人より髪と肌と瞳の色が少し薄く、三人揃って近眼――。並んでみるとこれがけっこう似ているのが三人で撮った写真を見ればわかる。私は机の写真立てを眺めて見た。お姉ちゃんの結婚式で、きょうだい三人で撮った写真がある。今では私の宝物の一つだ。
 
 白いウェディングドレスを着た幸せな表情のお姉ちゃんの両脇にいる私とお兄ちゃん。どこにいても三人がきょうだいなのは誰が見てもわかるほどだ。
「きょうだいで一つの物が欲しい」
というお姉ちゃんのお願いで撮られたものだ。撮影者は旦那さんで、この時に限ってお姉ちゃんはコンタクトの相性が合わず、お色直しまでの写真では眼鏡になっているのも今では思い出話だ。今は離ればなれで暮らしているけど、過去にいろいろあったから関係は強いと思っている。

「あー、駄目だ。何の式書いとうか全然わからん……」
 式に行き詰まりギブアップ。気分転換にテレビを付けて適当にザップすると聞き慣れた激しい音楽に思わず手を止めた。「あ、お兄ちゃん……」
 深夜のMTV。画面の中で歌っているスリーピースはNAUGHTと呼ばれるバンドだ。

作品名:悠里17歳 作家名:八馬八朔