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チンタ 残してゆく じゃじゃ馬さんへ

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11 君となら賭けてみせる



(1)

自分が先に
好きだと告げたら
僕が冷たく
撥ねつけるかと
怖かった?

うるんだ瞳は
そう見えた

ずっと前から
告げたかったのは
僕の方

すれ違いで
とうとう
叶わなかったけど

だから綴った

君に向かって
告げるつもりで
綴りながら
自分に誓った

最後のページを
読めばわかる
お互いさまだ
安心していい

チンタ

君が
来てくれたから

そのノートごと
心を君に
預けるから

前を向いて
僕は発てる

だから泣くな
笑ってて

僕が蹴った
木の雨水に
笑い転げた
あのときみたいに
笑ってて


(2)

散々だった
初対面

顔合わせれば
売り言葉に
買い言葉

今思えば
苦笑いだ

適当にあしらって
最後まで
見ず知らずで
終わることも
できたんだろう

誰彼なしに
そうしてきた

でも
君だけは
突っかかってでも
放っとけなかった

絡んできたがる
悪がき達を
相手するのも
うっとうしかった
この僕が

理詰めの君に
負けまいと
最初は
意地でも
理詰めで通した

そしたら君は
あるとき
あっさり
半身になって

理屈の鎧を
いともあっさり
脱ぎ捨てた

返してよこした
僕の本に
無垢な手紙を
添えた君

僕がけがを
したと知って
無鉄砲にも
訪ねてきた君

ろくに得体も
知らない僕の
反応を
怖いとは
思わなかった?

あの頃だ

図々しく
人の心に
飛び込んでくる
無邪気な君に
僕が兜を
脱いだのは


(3)

なんて
跳ねっ返りで
なんて
気が強くて
人の癇に
障ることを
ずけずけと

でも
賢くて鋭くて
そして心を
偽らない君

落とし主が
小憎たらしい
天敵でも

僕が心底
大事にしてる
宝と見抜いた
あの本を
返さないでは
いられなかった
潔い君

飛行機の窓から
ジャカルタが
遠ざかる

あの中のどこかで
君が息づいてる

発つ前に
ある人が
笑って言った

動物本能の
目覚めだと
パッと咲く
花火だと
思春期には
よくあることだと

恋が叶うだの
愛が続くだの

それが
僕らの年頃なら
なおさら奇跡だと

健やかなるときは
まだしも
病んだときの
不様さが
目に見えると

なればこそ
僕は賭ける

九分九厘
嘲られても
それでも
残りの一厘に
僕は賭ける

チンタ

君となら
賭けてみせる

 
  <完>