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High voltage 〜第一話〜

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「よろしく!!」

5月の暖かい日差しの中窓際の席に座っている鴻大は、2講時目の国語の授業中、魂が抜けたように考えごとをしていた。勉強しているわけではない。その前に一般人がこの学校でまともに勉強が出来るはずがない。なぜなら授業が授業ではないからだ。あるものはバカみたいに大声を出し喋って笑い、あるものは二三人とエロ本を回し読み、あるものはでかでかと机に足を置いて熊の鳴き声のようなイビキをかき寝ている。こんな状況の中で集中して漢文を覚えるられるのは、よほどの勉強家か、耳が聞こえないか、ぐらいである。
鴻大は昨日のこのクラスに入って初めてのあいさつを失敗したと思った。あのテンションは場違いだったなと心の底から後悔していた。実は、1-2のクラスに入る前に鴻大はどのようにみんなと溶け込めるか考えていた。やはり最初の最初。滑り出しが大切だと思った。そこで最初のあいさつをどのようにするか三つのパターンを考えた。
まず一つ目、昨日鴻大が実行したあいさつだが、元気よく清々しく好青年のようなテンションで一言「よろしく!」と、言う。
二つ目、クールに物静かそうに淡々とあいさつを進める。こいつ知性を兼ね備えているのか!と言う印象を与える作戦。
三つ目、がちがちのヤンキー風にあいさつをする。
この中からまず無かったのは、二つ目である。なぜなら鴻大は頭が良く無かったからからだ。最初の印象はいいものの後でボロが出たとき、お前は見かけ倒しかと幻滅されるかもしれないからだ。その次に無いと思った選択肢は三つ目である。入学早々クラスの奴と問題を起こしては、後々仲良しようがないからである。やはりオーソドックスに一つ目のように元気いっぱいで好印象を与えるしかないと鴻大は思った。
「よろしく!!」
…………。クラスの雰囲気は南極の寒さより凍りついた。当たり前だ。目の前にしている奴らは正真正銘のヤンキー共だぞ。こんなんでいけるはずがない。鴻大はこの一言の直後に後悔した。その後全員から「舐めトンのかワレェ?!」という視線を送られながら席に座ったのは言うまでもない。
「しくったなぁ」
赤い坊主頭を書きながら鴻大はボソッと言った。

明聖高校の全ての授業を終える鐘が鳴った。
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン
昨日今日とクラスに馴染めなかった鴻大はどうしたものかと、深い考えごとをしながら帰り道を歩いた。鴻大の頭の中の予定では入学の初日にクラスの半分とは仲良くなると計画していたが、二日目も友達は出来なかった。鴻大は頭を抱え込みながら
「ちっきしょー!どうしたら仲良くなれるのか…。」
すると、少し向こうの方に明聖の生徒が三人こちらを睨むように立っていた。なんだろうなと思いながら気にせず鴻大は取りすぎようと思ったが、そのうちの角刈りの生徒に呼び止められ、道を塞がれた。
「おいてめぇ、一年坊主のくせになんだぁその頭?いきがってんじゃあねぇぞ?!
コラァ!!」
と角刈りは言った。襟の校章の色を見る限り、ニ年生のようだ。
明聖高校は、学年ごとに色がある。今年の一年生は緑色、ニ年生は赤色、三年生は青色である。
「なんのことっすか?」
と鴻大は言った。すると角刈りの隣のパンチパーマが口を開いた。
「てめぇ転校生なんだってなぁ?この高校の風習はなぁ新人、弱え奴はいきがんねぇ ってことなんだよ!!」
「俺ぇ別にいきがってねぇっすけど。
この髪型は俺が好きでやってるんすよ。だから通してくれませんか?俺も入学早々問 題起こしたくねぇんすよ。」
と鴻大は言った次の瞬間!ボコォ!!
三人目のソフトモヒカンの二年生から腹を思いっきりなぐられた。
「ぐぉっ」
と鴻大は咳き込んだ。三人の二年生はゲラゲラと笑った。
「先輩に逆らうとこうなるんだよぉ!」
そしてまた後の二人からもそれぞれパンチパーマから顎と、角刈りから頬にキツイ一撃を喰らった。
バキィ!!
ズドッ!!
鴻大は仰向けに倒れた。
「今日のところはこれ位にしてやるぜぇ!」
「明日までにその薄汚ぇたわしみてぇな髪型なおしてくるんだなぁ!」
パンチパーマと角刈りは言った。そして三人は鴻大に背を向け立ち去ろうとした。
「先輩さんよぉ……一回は一回って知ってっかぁ?」
鴻大は仰向けになりながらいった。
「あぁん??!」
「なんか言ったか?あん?殴られたりねぇのか?」
鴻大は立ち上がっていた。パンチパーマが再び鴻大を殴ろうと戻ってきた。
「鞭をうたねぇとなぁ!!」
とパンチパーマは言った。
「一回は一回だぞ……覚悟しろ…。」
「一回は一回だぁ?旧ぃんだよ!このカスが!!」
と鴻大の顔面にパンチを打ちこもうと腕を伸ばした瞬間
バシィ!
とパンチパーマのパンチは受け止められた。
「なにぃ?!!」
鴻大の瞳をパンチパーマが見た瞬間。パンチパーマは凍り付いて動けなくなった。それはまるで蛇に睨まれたネズミのように、圧倒的な力の差を感じた。鴻大の瞳はさっきまでのフワフワしたものとはまったく変わり、ギラついたサメのような、虎のような瞳をしていた。
「あんたは、顎に一発だ…。」
と鴻大が言った瞬間、目にも止まらぬ速さで鴻大の拳がパンチパーマの顎を貫いた。
バッグォ!!!
パンチパーマは3メートル位吹き飛んだ。
グェェッ!
ウー、ウーとかしか呻かなくなったパンチパーマを見て、角刈りが
「てめぇ!!」
と鴻大にキックを入れよとしたが、これも鴻大にあっさり止められ
「てめぇは頬っぺただぁ!!」
バキィィ!!!!
再び鴻大の拳が角刈りの頬を振り抜いた。その場にグラアッと角刈りが倒れこむ。どうやら頬骨にヒビが入ったようだ。
「残るはあんただ…てめぇの腹にブローを叩きこんでやらぁ…。」
と鴻大はギラリとソフトモヒカンを睨んだ。
「ひぃっ!」
ソフトモヒカンはその立ち尽くしかなかった。鴻大は一気にソフトモヒカンと間合いを詰め、電光石火のブローをソフトモヒカンの下っ腹に打ち込んだ
ズドッ!!!
という鈍い音がした。ソフトモヒカンはグェっとゲロを吐いた。
「あーーーー!たっくよぉ!またやっちまった!あんたらが俺を素直に通さねぇから!しかも手ぇ出したから!またやっちまったじゃねぇかよ!!あんたらのせいだからな!!早くどっか行きやがれ!ぶっ殺すぞぉ?!!」
と鴻大は叫んだ。
「お……覚えとけ……よぉっ…!」
とパンチパーマとソフトモヒカンが角刈りを担ぎながら去って行った。
河川敷をバックに夕陽に照らされた赤髪の坊主頭がさらに頭を抱え込みながら、トボトボと歩いて行った。
作品名:High voltage 〜第一話〜 作家名:石井俊