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High voltage 〜プロローグ〜

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Y県S市、近年の好景気によって次々と高層ビルや、住宅街が形成され、発展がめぐるましいこの町には、たくさんの人がいる。この好景気にまかせ必死に働くサラリーマンや、落ち窪んだ目でコンクリートの歩道を死んだように歩く老人、何をしていいのかわからずとにかく仲間とたむろってはしゃぐ若者、タバコをふかしながらこの大都会を彷徨い歩く娼婦、このむさ苦しいほど人がいる町には、当然自分の意思を貫き青春を謳歌する者もいる。つまり不良だ。ひと昔の言葉でいうとツッパリ、この現代の言葉でいうとDQNである。この物語はそんな高層ビルの森と腐るほどの人にもまれながらも素晴らしき青春を血と汗と拳によって生きる漢たちの話である。
午前10時 S駅には、たくさんの電車が通る、その中の一つから一際目立つ若者が電車から降りてきた。178センチの身長で、赤髪で襟足だけを伸ばした坊主頭、短ランに丁度いい太さ(一般人にはわからないが不良の世界ではそこそこ丁度いい太さ)のボンタン、という姿をした俗に言う不良である。彼は通りすがる人から、嫌悪の目で見られるのをまったく気にせず、人の大群をグイグイと押しのけながら、無駄にでかいS駅を出た。
「やっぱ都会は違うなぁ…。」
と言いながらスマートフォンのマップを見ながら目的地まで歩いた。その途中もいろいろな人にこいつも不良かといとう哀しみの視線を浴びせられたが、彼はそんなことはまったく辞せずに歩き続けた。
Y県S市立明聖高等学校
ここは、次々に新たな学校が建てられて行く中、県内で最も古く建てられた高校で、大正から続く由緒正しき歴史をもち、県内でトップクラスに偏差値が低いことでも有名である。また、偏差値が低いため必然的に落ちこぼれや、不良がわんさか入り、男女共学ではあるが、その98%の生徒は男子である。残りの2%の女子生徒のことについては、まだ話さないでおこう。
そんな高校のスプレーの落書きで埋まった門の前に、さっきの赤髪の若者はいた。ふぅっとため息をついて、深い深呼吸をした後、よっしゃと拳を硬く握りしめ門をくぐり校舎の中へと入って行った
10時30分 赤髪の彼は職員室の隣にある部屋でこれから担任になる先生からこの高校についての説明なんかを受けていた。大抵の人なら赤髪でボンタンをはいたそこそこ身長の高い高校生を前にしたらビビってしどろもどろして目を合わせられないが、この先生はこの高校で長く教鞭をとっていたためか、しわくちゃの顔をひと時も赤髪の彼から離すことなく曇った眼鏡の奥からじっと、ライオンが獲物を狙うような、天高く舞う鷹が獲物めがけて急降下するよな目で説明をしていた。
「えっとこの高校についての大まかな説明は以上です。そんじゃあそろそろ君の新し いクラスに顔を出そうか。改めて、私は君のクラスの担任の酒井です。これからよろしく。」
と、ぼそーと、しわくちゃの顔が言った。
「よろしくお願いします!」
赤髪の彼と酒井は部屋から出た。
10時40分 3講時めの始まりに酒井は1-2のクラスに入っていった。
「えーと。これから新しく君たちのクラスに入ることになった転校生を紹介します。」
酒井が言ったあと、生徒が騒ぎ始めた。
「ジジイ!女か?!女かー??」
「女なわけねーだろ頭湧いてんのか?」
「ジジイ!早く呼べよ!」
酒井はそんな生徒達を叱ることもなく、入っていいよ。と、ボソッと言うとガラガラと音を立てながら赤髪の彼は入ってきた。
「なんだぁこいつはぁ?!」
とまたもや男どもが騒ぎ始める。そんなよそ者は叩き潰すと言わんばかりのガヤを気にもせず、ガラの悪い男どもの視線をものともせず赤髪の彼は口を開いた。
「えー…あーっと…なに言やぁいんだっけ?
あーそうだ。えーN県から転校してきた
昇坂鴻大です。
よろしく!!」
と赤髪の彼、昇坂鴻大は言った。彼の名は、のぼざかこうた。後にこの高校の大将となる漢だ。