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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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16―1 【緑】

 【緑】、「糸」偏の右部は「剥がす」(はがす)という意味がある。
 ここからなのか、【緑】は皮を剥ぎ取った時の竹の色、そんな色をした「糸」のことだとか。

 こんな【緑】(みどり)、どうも平安時代から登場したようだ。
 そして現代では「赤・青・緑」、光の三原色の一つだ。
 だが、この【緑】……実にややこしい事態となっているのだ。

 代表例が信号機。そこには赤と青と黄がある。
 だが英語では、この「青」はあくまでも「グリーン」。
 「ブルー」とは決して呼ばないし、「青」は現存しない。
 英語で「ブルー」は憂鬱という意味合いがある。
 安全だから前へ進め! それが憂鬱な「青」では困る。

 安心して進んでもOK、それはあくまでも「グリーン」、つまり【緑】なのだ。
 国際規格でも交通信号は【緑】・黄・赤と決まっている。

 それでも日本の信号では――「青」と呼ばれている。
 ならば実際に、それは青色か?

 これがまた複雑で、「青」でもないし、そして決して【緑】でもない。
 いわゆる「青緑色」という範疇(はんちゅう)。
 なぜこうなってしまったのだろうか? これがまた曖昧(あいまい)で、理由がはっきりしない。

 また他に、日本ではちょっと危なっかしい未熟者を「青二才」と呼ぶ。
 これが英語では、「He is still green.」、つまり、ヤツは【緑】だと言う。

 さらにだ。日本では【緑】の黒髪……なんちゃって。
 一体これは──「どやねん!」と、思わず叫びたくなる。

 ことほど左様に、【緑】という漢字、「糸」だけに縺(もつ)れてるようだ。