わすれもの
マンションの前には、数本の桜の木のが植えられている。
桜の木から、桜が散っている。
その前を小学生3人が走って通りすぎる。
○高級マンション(301号室・林家・早希の部屋・朝)
ベッドの上や床には、数個のバックが散乱している。
早希「ない、ないないなーい!」
制服を着た早希(17)が、バックを逆さまにしたり、クッションを持ち上げたりしている。
早希、壁にクッションを投げつける
怒った顔をする早希。
早希「お母さーん!(叫ぶ)」
○同・リビング(朝)
走っている女
○同・早希の部屋(朝)
花柄のエプロンをした智恵(45)が手をエプロンでふきながら、入ってくる。
心配そうな顔をする智恵。
智恵「どうしたの??」
泣きそうな顔をする早希。
早希「私の化粧ポーチがないの!」
あたりを見回す智恵。
智恵「知らないわよ。ちゃんと管理しておかないからでしょ!」
うなだれる早希。
早希「昨日、ファミレスで起き忘れちゃったのかな…」
智恵「じゃあ、学校の帰りにとってきなさい」
早希 「どうしよー。 化粧してないと、和樹君に嫌われちゃうかも…」
そんな早希を見て、悲しげな顔をする智恵。
智恵「もう、しょうがないわね」
立ち上がる、早希。
智恵「お金渡すから、途中で買っていきなさい」
部屋を出る智恵。
その後ろを、バックを持った早希が笑顔でついていく。
○同・リビング(朝)
智恵、バックの中から大きい財布を取り出す。
財布の中から、一万円を取り出す智恵。
一万円がするりと、智恵の手から離れる。
早希「ありがと!」
と、玄関の方へ向かう早希。
智恵「あ、ちょっと!」
重い鉄の扉が閉じる音が響く。
そのドアを見つめる智恵。
智恵「そっか。早希は好きな男の子がいるのね…」
微笑む智恵。
智恵「行ってらっしゃい」