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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN 1 ルガーP08

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「なるほど…… あたしも殺し屋の線でちょっと掴んだ事がありましてね。それで繋がったよ……」

あくる朝、例のトレーニングを済ませると三郎を除く全員が食堂にいた。三郎は夕べから帰っていないようだ。お疲れ様です。朝飯はハムエッグ、サラダ、ライスに牛乳という標準的なメニュー。念のため誰が作ったか確認したところジムだった。まずは安心。味は保障しないよとジムは言ったが彼の料理は水準以上だ。
朝から上機嫌に食事するジュンに昨夜何をしていたか聞くとあっけらかんとこう言った。
「ん? ベンとHなことしてたよ」
 ベンが牛乳を拭いた。後「してないしてない」と真っ赤になった。わかりやすい奴。
「初めてだったんだけどベン優しかったし」
 ベンは「してないしてない」とさらに言おうとしたようだが動揺して声が出ないようだった。どっちが本当の事を言っているかは明らかだ。
 ジュンの言うことが本当なら細かい描写付で真相を語ってほしいものだ。
「お嬢様が下ネタのギャグはやめろ」
「ケンちゃん女の子に幻想持ちすぎ」
 ジュンは変にいたずらっぽく笑った。キャラに合わない会話と表情だ。
 無理してやがるんだろう。
「こいつはそういうギャグについて来れるほど擦れてないんだ。からかうのはよせ」
 真面目な俺の声にジュンは「あー」と声を上げて、ごめんねとベンの顔を覗き込んだ。
 ベンは飛びのいて「いいよいいよ」と顔を背けた。顔をおさえている。ひょっとして鼻血でてる?
「ケンちゃんは何やってたのよ」
 ジュンが話題を切り替えた。
「三郎と出かけてた」
「どこに」
「パークホテル」
「そういう関係だったの?!」
 えーい、女はすぐこれだ面倒くさい。
「情報収集だ。三郎の仕事しだいで事件は解決だと思う」
 ジュンはほうぉぉと感心した声をあげた。
「言っておくが犯人の逮捕とかは警察の仕事だ。このゴタゴタの解決の目処がついたって事だぜ」
「誰なの犯人」
 さすがにジュンは真剣な顔になった。
「三郎待ちだって…… それに連中がしょっぴかれるまではあんまり知っていると危険だぜ」
 なんて話をしていたら立派な車が表に止まった。防犯カメラがついてるので食堂からも見えるのだ。降りてきたのはやはり三郎だ。車はそのまま走り去っていく。
 上がってきた三郎に首尾を聞く。
「ラーメン屋の情報どおりだ。裏は取れた。いつでも行動できるぜ」
「さすがだな。朝飯は?」
「いらん、少し寝かせろ」
 徹夜で何をやってきたかは聞かないのが大人。やつにかかればおばさんから情報を引き出すなんて簡単なことなのだろう。俺には人類で一番手ごわいがな。
「私、買い物行きたい。着替えなくなっちゃった」
 洗えよ。
「事件解決に向けて俺はちょっと仕事がある。その後ならいいぜ」
 三郎も一眠りした後なら付き合うといった。どの道まだ店は開いてない。
「ならさ、私みんなで写真撮りたい」
「写真?」
「記念写真だよ。ブログのねたにもなるでしょ。ケンちゃんの部屋にカメラあったじゃない」
 ある。愛機オリンパスE−M1だ。いささか古くなったが防塵防滴能力は今も他の追随を許さないアウトドア向きのデジタル一眼レフだ。まあ確かにジュンがHPに載れば見栄えもいいし、おとといから話題になりまくってるからちょうどいいか。
 というわけで寝る前の三郎まで引っ張り出してビルの前で仲良く集合写真を撮った。
 ベンはこれ一枚しか写真無いんじゃないかな。
 俺達もジュンも何故か楽しげに笑っている写真だった。

 昼近くなって俺達はDクマに繰り出した。銃撃戦があったのにもう普通に営業しているのはさすがだ。
 護衛の人数は多いほうがいいので店閉めて全員出動である。一応用心のため俺はアルミ製の鞄を持ってきた。秘密兵器である。
 ジュンはらしくないチープな服を物色。飽きたらベンの服まで選び出した。俺の時よりやけに派手目のをチョイスしていた。からかい半分なのは明らかだ。親愛の証なのかもしれない。
 ひとしきり見て回った後、遅いランチになった。2時回ってやがる。Dクマの前はセルフサービスのフードコートとベンチが並ぶ広場になっている。祭日は大勢の人で賑わうが今日は平日だ。人はまばらである。各自好きな昼飯を購入しテーブルを囲む。俺とジムは大盛カレー。ベンはおにぎり。三郎はホットドックを3本。ジュンはパスタと念願のみこしやのたこやきだった。
 さて…… さっき打っておいた手がそろそろ効果を発揮するころだが。
 携帯ではなくスマホを出して確認する。こいつも勿論対衝撃防水スマホ。
 書き込まれている。しかもHIT数も反応もかなりのものだ。念のため報告するか。ポケットから携帯を出して電話する。
「シェリフ、ネットに興味深い記事が」
 警察署長様に直電すると怒声が返ってきた。ま、この人はいつも声はでかい。
「人格改善とかいうやつらの件だろ! こっちは対応で忙しいんだ!」
 こっちの声も聞かずガチャンと切った。いや携帯だからポチッとなんだが、シェリフの場合どうしても黒電話を叩きつけるイメージが強い。
 ネットの記事はこうだ。
「人格改善セミナー利用し強盗殺人」リュック・コールマン(46)は精神治療を理由にねずみ講まがいの手法で若者を集め暗示と薬品を用い洗脳。数々の犯罪を計画実行してきた。銃器を多く買い集めテロ活動まで画策していた模様。
ご丁寧に銃取引の現場のビデオまで映されていた。映っているのはコールマンと中年男。
中年男は背中向きで顔は映っていないが状況からしてローランドとみていいだろう。
ジュンのI−podに入っていたデータを解析して俺がハッカーにばら撒くよう頼んだものだ。あのおばさん以外にもこのデータが入っていたのだ。
ジュンのお父さんが映っていたのでジムが気を使ってあの時は隠していたのだ。
ローランド氏は何故こんなデータを隠していたのか。
おそらく保険だったのではないか。裏取引の後証拠隠滅のため暗殺されることはよくある。製品を裏組織に買ってもらったのはいいが消されてしまっては何にもならない。そこで自分が死んだらこのデータが流されるぞと組織に言っておいたのかもしれない。しかしまぁ結局殺されちゃったわけだが。
 データはローランド氏の側近辺りがばら撒く予定だったのだろうがジュンが間違えて持ち出してしまったので今まで公開されなかった。
 組織がジュンを襲ったのは言うまでもなくデータの回収。
 公開されてしまった以上もうジュンを狙う意味はなくなった。それにシェリフが出張ってきた以上小娘なんか相手にしている余裕はあるまい。まあそういうことでどうだろう。
 西のほうからパトカーのサイレンがけたたましく鳴り響いた。シェリフ出動だ。がんばってね。
 ジュンが携帯を見て事態を把握した。ニュースが送られてきたんだろう。
「これ、この事件のことだよね」
「まあね」
「ケンちゃん達がネットに情報を?」
「声がでかい。ノーコメントだ」
 俺はカレーを全部食い終えてから告げた。
「これでとりあえずお前を狙う奴はいなくなっただろう。一件落着だ」
 するとジュンはほっとするどころか怒った。
「落着じゃないよ! お父さんを殺した犯人は見つかってないじゃない」