源内倶楽部 2
帰雲が源内に代って仁左衛門の相手をした。
「お出かけならば一人お供にお加えいただければと存じまして。何かとお約に立つと存じますので」
源内は仁左衛門の申し出に「また金の匂いでも嗅ぎ付けてきたか」と呟いた。
手代の蔵造が店の方から小走りでやって来た。
「旦那様お呼びでございますか」
「お前さん、これから源内さまのお供しておくれ」
仁左衛門は懐から財布を出すと蔵造に渡した。
源内は、仁左衛門の強引な申し出に、まだ納得していない様子で横を向いたままでいた。
「大勢の方が賑やかでよろしかろう」
良信は「また増えたか、ええぃどうとてもなれ、わしゃもう知らんわ」とすでにあきらめの心境だ。
それにぐずぐずしていたらば、また楽しみにしていた吉原遊びが日延べにでもなったらと心配しただけで賛成したのだ。
「よろしゅうございましょうご隠居蔵造さんなら」
帰雲は蔵造に興味を持っていた。
「帰雲さんがよいならばそれでよいわ」
「ありがとうございます、蔵造さんしっかりとお願いしますよ」
「さあ早く出掛けましょう」
源内はさっさと歩き出した。
「おおそうじゃ」
源内は何かを思い出し、立ち止まる帰雲達の方に向き直った。
「ご隠居、また何か」
「ちょうどよい、蔵造さん、伊左次さんたちに着物を用意しておくれではないか」
「あっしらならこれでかまいませんが」
「その役半纏はうるさい奴等の虫除けにはよいが、どうにも目立っていけねーよ」
「そうでございますな、蔵造さんお願いいたします」
「かしこまりました着物をすぐに用意いたします」
蔵造は屋敷の蔵の方に小走りで向かった。
すぐに蔵造が戻って来て、伊左次達が着替えを済ませると、源内が乗った駕籠を伊左次達が担ぎ、源内達一行は相模屋を出て吉原へと向かった。
「やれやれじゃ」
良信がほっとした顔で呟いた。