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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章   12話   『歩み寄るヒカリ』

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「んで、話って何だ?また、あのバケモノについてか?」

俺たちは例のごとくヒカリのお気に入りの屋上にやってきていた。
…今にここに住みつくんじゃないか?

「ん?いや、違うぞ」

あっさりと否定されたな~おい。

「んじゃ何だ?」

「フフフ…それはな。実は、貴様のことだ」

「って俺のことか。それはまた予想外な言葉だったぜ」

しかし、俺のことか。
一体どんな話が展開されるんだろうな。…実に興味深い。

「貴様、前回の魔獣者との戦闘のことは覚えているな?」

「え?あ、あぁ、まぁ…な」

「何だ?その自信なさげな曖昧な返事は?」

「いやな、途中まではしっかりと記憶にあるんだ。けど、俺があのバケモノにやられた後にどうなったのか記憶にないんだ。…そう、俺があのバケモノを倒したっていうことも全部な」

「フ…。やはりな」

ヒカリは微笑を浮かべる。
…やはり?

「やはり…ってことはヒカリは何か知ってるのか?」

「フフフ…もちろんだよ。実は、話というのはそのことなのさ」

「…説明してもらおうか」

「フフフ♪聞きたいか?では、今から言う選択肢2つのうち好きな方を選ぶがいい。1つは『私たちに協力する』、もう1つは『これを聞いてから私たちに協力する』。さぁ、好きな方を選べ」

「ってちょっと待てッ!!なぁにが好きな方だッ!どっちも同じじゃねぇか?!そんなもん選択肢でも何でもないわぁッ!!」

まったく、このお子様魔法使いは…

「フフフ…そうか。代わりにそれじゃその代償にこう言ってもらおうか。そうだな…『ヒカリ様、どうぞこの哀れな愚民である私めにどうかそのお話をお聞かせください』とでも言ってもらおうか」

ヒカリはニヤニヤと俺の方を見ながら笑っていた。

「言えるかッ!そんなこと!口が避けても言いたくないね」

ふざけるのも大概にしやがれってんだ。そもそも何でそんなこと俺が言わんとならんのだ。
しかも、こいつに。

「ほ~そうか。じゃ、何も知らないまま黙って殺されるんだな。ここでくだらん強がりであいつらに消されたいのか、貴様は?私は仮にもシェルリアの人間だ。貴様らとは違うんだ。だから、それだけの代償を負ってもらわんとな」

「う…」

確かに何も知らないままあのバケモノに消されるのだけはごめんだ。
昨日、ミナと約束したばっかだしな。…くっ、仕方ねぇな。

「…わかった。でも、もう二度と言わねぇからな。よく聞けよ!」

俺はそう言うと、顔を引きつらせてゆっくりと口を開く。

「…ヒ、ヒカリ様…ど、どうぞ…この哀れな愚民…である…俺にど、どうか…そのお話を…お聞かせください。ってこれでいいだろッ!もう言わんからな」

「フフフ…アーッハハハ!よかろう、それじゃ聞かせてやる」

ヒカリは俺の言葉に満足そうな表情で高笑いを決め込む。
…こいつ、むかつく。

「…だが、惜しいな。録音装置でも持ってくればよかったな。さっきのは実に愉快だったからな。あれを録音しておけば…実に残念だ」

…やめてくれ。それだけはホント勘弁。
あんなのが他のヤツに知られただけでも屈辱のうえに、とんだ恥晒し者だ。
…消えたくなるぜ。

「さぁ、ちゃんと俺はお前に言われた通り言ったぜ。今度は、お前の番だ。話してもらおうか」

「フフフ♪よかろう。では…」

そう言うと、突然、なぜかヒカリはポケットから扇子を取り出し、そして、バッと俺に向ける。

「おい、何のつもり…」

と俺は次の語を発することが出来ずに、呆然と立ち尽くしてしまう。
…なぜなら。

「リミット解除。…対象物を我が光刃で射抜け」

ヒカリの持っていた扇子が何やら紅くて禍々しい剣のようなものに変化し、それが光り輝いたかと思うと、無数の光の刃が弾丸のように俺に向かって飛んできた。
…おいおい、どういうことだ。何でヒカリが俺に攻撃してくるんだ?話をするんじゃなかったのか?こんなもん防ぎようがないじゃないか。

「…くッ!!」

俺は思わず無駄だとわかっていて身を守ろうと防御の型をとる。
-だが

「…くッ」

…あれ?何ともない。あの光弾はどうなった?
俺、助かったのか?でも、どうやって?!
俺は閉じていた目をゆっくりと開いてみた。-そこには

「何だ…これ?」

俺の両手が光り輝いていて、さらに、俺が見た先には光の障壁なものが展開していた。
これ俺がやったのか?

「フ…やはりそうだったのか」

何が何だかわけもわからなく混乱する俺を尻目に、ヒカリは何やら納得していた。
ってそこッ!!何納得したやがるッ?!…っとその前にだ。

「ヒカリ、どういうつもりだッ!いきなり攻撃してきやがって!死ぬかと思ったぞ!助かったからいいものを」

「確かにあのままだったら死んでたな」

おいおい。そんなあっさり言うなよ。

「ちょっと確かめたいことがあったのでな。それでいきなり攻撃させてもらったのだ。だが、結果は予想通りだった」

「…どういうことか説明しろ」

「貴様、魔獣者との戦闘で死にかけなかったか?あの時、貴様の魔力が大幅に弱まったのでな。違うか?」

「そうだな。あの時、確かに俺は、あのバケモノの攻撃をモロにくらっちまって死にかけた…っていうより死んだんじゃないかと思ったくらいだ」

「そして、貴様は死ぬどころかヤツを倒し、貴様は生きていた」

「あぁ。…だが、あのバケモノを倒したことは全然記憶にないけどな」

「やはり、そうだったのか。これではっきりとした」

「だから、一人で納得してねぇで俺にもちゃんと説明しろ」

「そうだったな。では、話すとするか」

ヒカリは持っている紅い剣を元の扇子に戻すと、ゆっくりと話し始めた。

「貴様は、あの魔獣者の戦闘により貴様の中で眠っていた力が微弱であるが目覚め始めたのだ。それは、貴様の身に危機が迫ったのがきっかけになった」

「俺の中で眠っていた力…?例の『鍵』の魔力か?」

「そうだ。その証拠に貴様の魔力が極限まで低下した瞬間に貴様の魔力が許容量を大幅に超えたのをこっちでは感知している。そして、貴様はその力でヤツを倒したのは事実無根だ」

「俺にはわからんが、ヒカリが言うんならそうなんだろうな。なんせ俺は記憶にないんでね」

それにあの時ミナもいたし、俺がバケモノを倒したのを見ていたみたいだしな。

「それはシェルリアの魔力が作用してるのが原因だろう。貴様にもシェルリアの魔力が流れているわけだからな。だが、実はそれだけではない」

「どういうことだ?」

「実はな、どうやら貴様の中に眠る宝具は死に迫れば迫る程、宝具から莫大な魔力が放出供給され魔力のオーバードライブを引き起こすみたいなのだ」

「魔力の…オーバードライブ?何だそれ?」