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ジュスティーヌは何をもたらすか

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 平民などに、この少女を渡してたまるか。いつの間にかドミニクは平民の男を相手に一人戦っていた。
「どうぞ罰を与えてください」
「では、こんな暖かいところで純潔を奪うのはやめておこう」
 ドミニクは右手の中指と人差し指をかぎ状にまげて、少女に呟く。
「まさか」
「屋内だよ。いくら私だってそこまでしないよ」

 ジュスティーヌは地下牢に連れられ、下着を脱がされた状態で鎖に繋がれていた。無論ドレスの下に見につけられているはずのブラジャーも脱がされ、ドレスの下には何も見につけられていなかった。
「食べな」
 地下に戻ってきたドミニクは、マカロニチーズを盛り付けた皿を少女の前に差し出した。
「これは」
「お前の夕食だ」
「あの、フォークは」
「無いよ。これをつけて食べるんだ」
 ジュスティーヌは太腿と手首が鎖で繋がっている枷、いわゆる太腿枷を装着された。ドレスの丈は膝丈だったため、めくれ上がれ太腿どころか臀部の一部さえも見える状態になっていた。
「無理です」
「口だけで食べな」
「罰はこれだけですか」
「そうだよ……早く食べな」
 少女は食べ始めるがすぐに眉を顰めていた。ドミニクが出したマカロニチーズは料理人手作りのものなのでは到底無くアメリカ産の安価なインスタント食品で、味も粗悪なものだった。ドミニクはそれを分かってわざと少女にそれを差し出した。
「全て食べるんだ」
「私の食事は毎日こんなにまずいものですか。家でだって私、もっとましなものを食べていました」
「今日は罰だよ。本当はちゃんとしたものを出すつもりだったし、罰を与えるとき以外はちゃんとしたものを出すよ。今は全て食べるんだな」
 少女は食べ続ける。しかし口に広がるのは唾液の味と美食の国民フランス人にとっては到底我慢できない奇妙な味だけだった。
「胡椒を、胡椒を少し振りかけていただけませんか……ええと」
 ジュスティーヌはドミニクのことをどう呼んでいいのか戸惑っていた。
「私はお前の主人だ」
「お願いします、ご主人様」
「鞭一発と引き換えだ、どうする」
「お願いします」
 すかさずドミニクはバラ鞭を取り出した後少女の臀部を叩き、派手な打撃音が響き渡った。しかしバラ鞭は派手な打撃音の割には痛みが少ないため、深い傷を残すことはない。
 その後もジュスティーヌは何度かドミニクに胡椒を請いだ。その度にジュスティーヌはドミニクにバラ鞭で臀部を打たれた。

(やりすぎたか)
 ドミニクはマカロニチーズを食べ終えたジュスティーヌに口付け、口腔を弄る中そう思った。せめてフランス産のオートミールあたりにしておくべきだったか。
 しかし他の男が脳裏を横切った衝撃には耐えられなかった。気づけばバラ鞭とはいえ鞭まで握っていたのだから。
ドミニクが口を離した後、ジュスティーヌ鎖が繋がれた状態でそのまま二人の身体は重なった。ジュスティーヌが青い瞳を見開いたとき、ドミニクの右手にはルビーのような真紅の血が微かに見えた。
「どうして、私を買ったのです」
「お前の両親を『貴族』に戻すためだよ。お前たちの家柄は元々は下級貴族だったけれど、お前の先祖さんが納税を怠っていたから私の先祖がお前の先祖さんを平民にしてしまったんだよ。でも今なら金さえ出せば買える貴族の姓もある。でもそれだけでは『貴族』とはいえないから、貴族に戻す手配にかかる諸々の費用を私が出すかわりにお前を買ったのだよ。まあ面目上は経済援助だけどさ。そしてジュスティーヌ、お前は運がいいことに一日にして伯爵令嬢だよ! まあお前さんを一目見てからこれは違いないと思ったけれど……という訳だ」
「私が貴族、ですか」
「言っておく。鎖を握っているのは私ではなく、ジュスティーヌ、お前だということを」
 ドミニクは鎖を揺らして言った。
「お前のその姿は私を狂わせる。そして私はこれ以上狂わないようにお前を調教するだけだ」
「私が、あなたを狂わせるのですか」
「私だけだったらかまわない。もしお前が能力を開花させれば、フランスが滅びてしまう」
「フランスが、滅びるですって」
「今の話は忘れろ。そのくらいお前は魅惑的ということだ。今の話は忘れるんだ。さもないと、ずっとアメリカ産のインスタント食品を出すからな。さっきの話は、貴族の末裔で魅惑的なお前がいたら有力貴族たちが血みどろの争いを繰り広げてフランス全土を舞台に戦争が勃発するかもしれないということだ。私は伯爵令嬢だから、それを阻止する権限くらいはあるんだ!」
「はい、ご主人様」
(ジュスティーヌが強制進化の波動を封印した者の子孫などと知れたら、どうなることか)
 それは百年戦争の末期のことだった。ジャンヌ・ダルクが神のお告げに従ってフランスを勝利に導いたのもその時だった。その時、触手を持つあらゆる生物が生んだ子供達が次々と人々を襲う怪物へと進化した。その原因は地中から湧き出た特殊な波動の力であったが、真相は謎のままであった。そこに女性が現れ、波動を封印したが封印は六百年ほど後に解かれることになっていた。その触手生物の存在はその女性の能力より一部の貴族を除いて極秘事項とされ、人々の記憶からはすっかり消えており公的な記録も消し去られていた。政治家の上層部もその一部の貴族に当たる人物に当たらなければ知らない。封印はその子孫の年齢の割に異常な若さを持った女性が、封印した跡を踏むと解放される。ジュスティーヌは十八で高校を卒業していたというのに、見た目はそれよりいくらか幼く見えた。
 その場所は、現在のパリのシテ島にあるノートルダム寺院の最奥であった。ジュスティーヌはパリに何回か出かけたことがあるが、決してシテ島には行かせてもらえなかった。何故ならノートルダム寺院に赴き、波動の封印を解いてしまいフランスを滅ばせるこということがあってはならなかったからだ。
 ドミニクがジュスティーヌを『買い』、ジュスティーヌの一族を貴族に戻したのは単なる暇つぶしや快楽だけが目的なのではなかった。無論ドミニクが女性を好み、ジュスティーヌに惚れたのは事実だが、実際は波動の封印が解かれることを防ぐことが真の目的だった。最初からドミニクの一族がジュスティーヌを買うことが決まっていたわけではなく、パリから遠く離れている南フランスの中でも最南端に住んでいる者がジュスティーヌを監視することになっていた。そしてドミニクの家が偶然にも昔から深い関係があったことが分かり、ドミニクもジュスティーヌに一目ぼれし、さまざまな特権を得られるのでドミニクはジュスティーヌを手に入れることにした。
 フランスという国のためと私欲のためという、相反するものが絶妙に交じり合った結果であった。ジュスティーヌの一族を監視している貴族たちは内容は違うがドミニクのように全員特殊能力を継承していた。ドミニクのようにその能力が著しく強い者もいる。しかし彼らもドミニクと同じように真の力には気づいていなく、また真の力の半分も発揮していなかった。
 彼らの力もまた、強制進化の波動とともに封印されていた。
 そのようなことを知らない全国のフランス国民が、ノートルダム寺院を今日も訪れている。