瑠璃色の夏休み
大事な記憶
「父さま、また夏のお話をして」
「またか。何度も聴いているのだからもういいだろう」
「父さま、おねがい」
「仕方がない……今回が最後だぞ」
毎度こうしてせがまれて、唯一の夏休みの思い出を語る。後にも、そしてこの先の長い一生にも、夏休みというものはあれのみだろう。何度話しても懐かしさは消えてなくならない。
まだ、少年だった頃の、大事な夏の思い出だった。
「あれはまだ私が少年だった頃のことだ。すべては、かぐや姫から始まった」
もうずっと昔の話になってしまった。
夏は遠い。