小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ガラスの辞典

INDEX|1ページ/1ページ|

 
僕が[迷路]から持ち帰ったのは手の平サイズの機械だった。

『この階には「鍵」があと7つあります』

とそこには表示されていた。

「機械」は簡単に言うとガラスのカードで、表面に小さな噴水が出ていた。
その水しぶきの中に、よく分からないカラフルな滲みに混じって、白い文字が浮き出ているのだった。

「迷路」が退いたのはいいけど、ものを持ち帰ったのはまずかったかな。

僕は押しせよせる嬉しさを抑えるためにそんな風に考えた。

僕がさっき迷った[迷路]は『8月11日の午後』だった。
ということで、「こっち」でもだいたいその辺りに着地しているはずだ。

と思っていると案の定、警官に例の殺人事件の事を尋ねられた。

彼に肩を叩かれるまで、僕はそれが「屋敷」に続いている道だと気づかなかった。
それほど[機械]に夢中になっていたわけだけど、「よかったら話を聞かせてくれないかい?」というおなじみの声を聞いてかなりトーンダウンした。

「例の事件についてですよね。僕は‥」
「あ、君は『繰り返しの街』の人か」

この警官はいつも察しが良くて心地よくすらある。
そうなんです、と僕は言って、ポケットに「機械」を隠した。

「ところで、今日は8月1日だよ」

8月1日?

「迷路」と「こっち」が10日もずれていたのは初めてだ。
どんなに激しい「迷路」でも、3日以上差が出ることはなかったのに‥。

「あれ?向こうから帰ってきたばかりじゃなかったかい」

警官が不思議そうに尋ねる。動揺したつもりが、「知ってるよ」というような顔になっていたようだ。

「いえ、その通りです。ありがとうございます」

僕は礼を言って、早足でその場を去った。






【執筆中】
作品名:ガラスの辞典 作家名:lookmoon1