宝の地図
それから私たちは四人で一緒にご飯を食べた後、お父さんたちが野球中継を見てゆっくりしているところに例の地図を持って、テレビの前に割り込んだ。
「みんな、注目」
「なんだなんだ。ちょっと邪魔しないでくれよ」
お父さんは私をややこしそうな顔で見ている。そんなことお構いなしにこの家にいる人みんなの記憶という知恵を借りたかった。
「これ見てよ、これ」私はソファの前にあるテーブルに地図を置いた。おじいちゃんだけはすぐに注目してくれた。お父さんと、台所で後片付けをしていたお母さんも最初は「また麻衣子の大袈裟な話だ」と言ってたけど、最後は私の熱意がをわかってくれた。
「これがお婆さんの金庫に入っとったものか?」
「お婆さんの金庫?」おじいちゃんがそう言うと、私は頷きながら質問を返した。
「ワシのお婆さんの金庫なんじゃ、アレは」
おじいちゃんのお婆さんということは私はそのお婆さんの玄孫ってことだ。「やしゃご」という言葉は聞いたことがあるけど、その逆は何て呼ぶのか知らない、私が生まれる前から亡くなっている人はすべて「ご先祖様」だ。仏間の上にある写真のうちの一人がその人だろう、多分。知った人は二年前にここに並ぶことになってしまった私のおばあちゃんだけだ。
「みんな、これって何の地図かわかる?」
「さぁ、果たしてこれはどの辺なんじゃろか」
地図を見てみんな静まり返った。誰も心当たりがないらしい。興味津々に思っているのは私だけで、みんなあまり真剣に聞いてくれない。
「これはね、宝の地図だよ絶対!みんな真剣に考えてよ」
私が痺れを切らして沈黙を破ると、さらに静まり返った。テレビの野球中継から歓声が聞こえたと同時に部屋にいる大人三人が大きな声を出して笑い出した。
「麻衣子は真剣にこれが宝の地図だと思ってるのか?」
「代々農家のウチに宝なんてないわよ」
「ワシもそんな話は聞いたことないなぁ……」
私は半分涙目になった。じゃあ何のためにご先祖様が大事にこの紙切れを金庫に入れて守ってきたのよと聞きたかったが誰も聞く耳を持っていなかった。私は悔しくなって、何も喋らずに地図を片手に自分の部屋に戻った。それから私は開けていた窓を閉めてカーテンを掛けてクーラーのスイッチを入れ、ベッドにダイブした。窓の外にある大きな蔵は見えなくなった。
「あれは何なんだろう……」 私は寝るまでその地図のことが頭から離れなかったけど、この謎を解く手がかりは一つも思い浮かばなかった――。