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宝の地図

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「おじいさん、どうですか?」
「これは価値ある試合じゃぞ」
 私と先生は、先にレフトスタンドに座って観戦しているおじいちゃんの横に座って、バックネット裏のボードを見た。試合はもう八回裏、〇対〇乙浜高校の攻撃、二死一塁、大方の予想を裏切る大接戦。そんな雰囲気の中三塁ベンチから
「三番、レフト、松下君」
のアナウンスで駿太さんが現れた。今日の朝出会った時駿太さんが言ったように「花火」を上げれば試合は大盛り上がりだ。そしてそれは現実のものとなった。
 初球だった。駿太さんの打球は大きな弧を描いて私たちは頭の上を通りすぎると場内に地響きが起こるほどの歓声が沸き上がった。

 九回表、大役を果たした駿太さんは三塁ベンチからレフトのポジションに走ってきた。三塁側はまとまりのない歓声であふれかえった。
「駿太!」
 普段大人しくて優しい先生が大声で弟を呼んでいる、初めて聞くような大きな声だ。駿太さんは私たちに気付き、右手で帽子を取って、小さくお辞儀をした。顔は帽子で隠していたけれど、帽子の奥から白い歯がこぼれるのが見えた。
「かっこいい……」
 私はその姿にうっとりした。それから、ふと横にいる先生の横顔を見ると既に目が潤んでいた――。
 そして最後の見せ場は九回表の最後の守備。ツーアウトあと一人で最後のバッターが放った打球はレフトへの大飛球だった。
 駿太さんが素早くフェンス際まで下がり、両手をあげ捕球体制に入った。球場が一瞬静まり返り、全員が固唾を呑んで球筋を追った。
 ボールが駿太さんのグラブに収まった瞬間、レフトスタンドにいる人達はそこにいる知ってる人知らない人関係なしに抱き合って喜んでいた。
「いやあ、エエもん見られたなぁ」
おじいちゃんも疲れを忘れて興奮気味だ。
「駿太さん、本当に花火上げたよ!」 
 興奮して先生を見たら、汗か涙かわからないものを流してタオルで顔を拭いていた。口には出せないけれど、先生の、弟思いでちょっと涙もろい一面が見れてちょっと可愛いなと思った。私より随分歳上だけど。 

 試合が終わり、閉会式が始まる頃には会場も落ち着き、先生も落ち着いていた。目はちょっと腫れているけど。
「そうだ、花火……?、麻衣子さん、ちょっと地図を見せてよ」
「花火、川のほとり……、もしかしてこれか?」
「そうだ、軍の施設だ。あそこなら百年前の乙浜が解るかも」
 先生は次の目的地まで急ぐようにと行った。時計は四時に近付こうとしていた――。

作品名:宝の地図 作家名:八馬八朔