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「オバサン」

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オバサンは悪である。

自分の主張を強硬に押し通そうとする。

しかもその主張は極端なものであるか、或いは非常に限定的な状況におけるものであるかのどちらかだ。

そして他人の主張は決して受け付けない。


オバサンは害である。

何年間も生きてきたのに、何の教育も受けていないかのような知性に乏しいあの発言、学校に通っていた時間と費用の無駄である。(正に害虫だ 笑)

また、全ての行動において思考を自分(もしくは自分とその仲間)で満たしている為、非常に自己チューだ。


だから今だって、こんな言動が取れる。

電車の中で、4~5人のオバサン(どこまでが同一のグループだか分からない)が、前の駅で乗り込んできて大声で話している。

「あら~! 混んでるわね!」

「もぅ疲れたし座りたいわね」

「座れるかしらね!」

「山田さん! あの席空いてるわよ!」

座れるか座れないかとかいうどうでもいいことを延々と大声でがなりたててる。

しかもみんな大荷物を抱えていて、ウロウロ動き回るものだから、それが他の乗客の膝に当たり、ハッキリ言って迷惑だ。

就活中で疲れていて、且つ忙しく、この後もう1社廻らなければならない中で、電車に乗っている時間は結構大切だ。

自己PRを考えてみたり、大学でやってきた事が自分がやりたい仕事とどのように結びつくか考えたり、自問自答しなければならない事は山ほどある。

そんな中で、大嫌いなオバサンの集団に出くわしてしまうと、サイコーに気分が悪い。

折角まとまりかけた面接のイメージも脆く崩れ去ってしまう。

大体、この混んでる車内で4人一緒に座れる訳が無いだろう、足りない頭を使えと思う。


そんな中、腰が曲がった爺さんが電車に乗り込んできた。

爺さんは、たまたま席が空いていたので、座ったらしいさっきのオバサン達の一人(恐らく「山田さん」と呼ばれてた人)の方に歩み寄っていったが、山田さんは譲ろうという素振りは無い、知らん振りだ。

さっきは散々、大声で騒いでいたくせに、こういう時は急に静かになるんだな、現金なものだ。

大体、普段散々マナーが悪いとかで標的にされるのは若者達だが、実際のシチュエーションの中ではマナーが悪いのは大抵オバサン達だ。
 
この電車に乗る時だって、切符売り場でもたもたしたり、改札に入る直前に切符を出そうとして、バッグからとりだそうとしたら財布かなんかも一緒に飛び出してまた渋滞させて、挙句の果てに改札に切符を入れたら何故か引っかかるという目を覆わんばかりの醜態を見せてた人がいたがやはりオバサンだった。


どうしてこう人をイライラさせ・・・


「ザワザワザワ・・・」


急に車内がざわついた。

声が集まっている方を見ると、意外に近くだ。

さっきの爺さんが倒れている。

何かの発作か分からないが、ピクリとも動かない。

仰向けに横たわり、周りには乗客の人垣が出来ている。

男の人が二人位、爺さんの身体を揺すっている。

僕の周りに座っていた人達も立ち上がり、人垣に加わっている。

一体どうしたんだ、何が起こったのかさっぱり分からない。


そんな時、電車はちょうどホームに到着していて、出発のアラームが鳴り響いていた。

「ジリジリジリジリジリ・・・!!!」


「君!」

爺さんを直接介抱していた人に声を掛けられた。

「急病人なんだ! 電車を止めてくれ!」

電車を止める?

何を言われているのか良く分からなかった。

電車を止める、どうやって?

「外に出て! 早く車掌を呼んでて!!!」

言われてとにかく電車から降りた、呼ぼうとするが駅員は誰もいない、アラームは鳴り響いている、ドアが閉まる。

・・・声が、出ない。


その時、さっきのオバサンの集団が電車から駆け下りてきて、閉まってきたドアを押さえて叫んだ。

「電車止めてーーーー!!!!」


ドアは再び開いて、アラームは鳴り止んだ。

駅員が布で出来た担架を持って駆け寄ってくる。

僕はその様子を、見ていた。



この前の面接で、学生時代に一番頑張ったサークルの話をしていた時、面接官に「それで君は、何が出来るの?」と言われた事を、何故か思い出していた。


作品名:「オバサン」 作家名:小萩悠助