ヤマト航海日誌
うえーん。何もそんなところまで突っ込まなくていいじゃないか……けれども身から出た錆だ。だいたいおれの普段の行いが悪いことが悪いのだ。わかっているからどうしようもなく、「誠意がない」とか「反省がない」とかいう言葉に首を縮めて耐えるしかない。わいは、わいはダメな男やあ。
怖いねえ。その二万円ソフトがあれば、昔におれが『アパチュア――』って小説を書いたときにはできなかったことがいろいろできるのかなとも思う。ただの風景の色を変え、皆既日食を合成して、「どうだ、これが『ヘルナンヤデの日蝕』だぞ！」とやってみたり、猫のモンタージュ写真を作って、「迷子の猫を探してますねん」とやってみたり……今ではできるのかなとも思うが、それじゃあんまりおもしろい話にきっとならないだろうな。だからやっぱりそんなもん買わない方がいいんだろうな。
人間、何がきっかけで、人様から吊るし上げを喰らう立場にならないとも限らない。誰にも起こりうることだろう。たとえば、宇宙貨物船で君がノンビリ飛んでいたら、異星人の戦闘機に追われてなんとかやっつける。異星人どもはどうやら別の異星人の女を狙っていたようだった。
その〈女〉は死んでいて手に何やらカプセルを持ってた。君がそいつを変な昔の軍艦の形をした宇宙船に届けに行くと、なんと自分がその船で〈大法螺吹き〉と呼ばれてしまっているのを知る。敵を倒してカプセルを見つけた話が歪められて伝わっていたのだ。
ハンパ者の君を信じる人間はその船にはいなかった。武装のない貨物機で戦闘機が墜とせるわけがないだろうが。ほんとは一体どんな汚いことをしてそのカプセルを手に入れたんだ。そのカプセルがなんであり、このオレ達がどんな思いでそれが届くのを待っていたか。それを〈ヤマト〉に届けさすためどれだけ多くの仲間の命が犠牲になったか。
それも地球を護るためだ。お前は何も知らんだろう。この汚い盗っ人野郎が。戦闘機を墜としたなんて与太をあくまで言い張る気か。
誰がお前の言い逃れに耳を貸してやるものか。誰がお前をこの〈ヤマト〉の士官として認めるものか。ましてや、地球に帰ったときに、お前こそが人類を救った英雄などという話にしてたまるものか……誰も彼もにそんな眼で見られ、〈疫病神〉のレッテルを貼られる。
そんな立場に君だっていつか置かれないとも限らん。『戦闘機を墜とした』などと言ったって、たまたま肘が当たったようなラッキーヒットで難を逃れただけなのだ。『報告しろ』と言われたから、ロボットに文を書かせて送っただけのことなのだ。自慢したつもりなんてまったくない。
なのにハナから事情を聞いてもらえず皆から除け者にされる。だというのにその船で、『お前が戦闘班長だから先頭に立って敵と戦え』なんて言われる境遇に、いつなんどき君も置かれないとも……いや、そんなことありっこねえか。
でもまあ、とにかくそういう話だ。おわかりだろう。高等反則技なんか、なまじ使えていいことなんてあまりないものなんである。
ボンクラには理解されずに〈雑魚（ザコ）より下のメダカ〉と見られる。訳知り顔の優等生から、わかったようなことを言われる。『アナタの演奏が素晴らしいのは、楽器がいいからなんでしょう』とか。『まるで盗んだ宝くじが当たったようなものですね、その幸運にあやかりたいものだ』とか……。
その屈辱にあしたのために耐えるのが男だなんていうけれど、おれのあしたは一体どっちにあるんだろうか。