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ヤマト航海日誌

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『言い訳するな! てめえの都合なんか知るかよ。聞こえねえんだよ。オレはお前のそういう話は全部〈嘘〉だと決めてんだからよ。だから嘘だ! そんなのは嘘だ! 騙されねえぞ。お前は書ける。お前は『ヤマト』のリメイク小説を、一日あれば書けるんだ! オレがそう決めたんだからそれが絶対の事実なんだ! それをよくもまあ五年もかけてまだやっと冥王星で勝ったところなんていう……お前がその調子だからもうお前とお前の『ヤマト』を存在だけなら何千人も知っちまったじゃねえか! よくもよくも……もうこれ以上一日も待てねえ。五秒だ。そうだ。あと五秒だけ待ってやる。『敵中』をあと五秒で最後まで書いてここに出してそこで死ね! オレの脳内デスノートにそう書いたぞ。ハハハ、ザマーミロ。だから島田よ。その通り、お前は行動せねばならんのだ。オレが正義だ。だからオレが勝つと最初から決まっていたのだ。4、3、2、1……』


思い通りになった?


『なぜだあっ! どうして、完成していなんだあっ!! おれはそう書いたのにい!! オレの脳内デスノートに確かにそう書いたのにい――っ!!!!』


いや、だから、君の脳内デスノートに書いたからどうだという話だよ。あのマンガの例のノートも、殺す相手の死の状況を操るには当然の限界がある設定が――。


『オレはお前に小説を5秒で書けと言っただけだ! それは無理じゃねえ! オレが〈できる〉と決めたんだから絶対に無理なんかじゃねえ!』


って、そう言われても……。


『あのなあ、島田。お前にはほんとの才能なんかないからわからんだろうが、お前が死んでオレの才能が目覚めたら、お前の『敵中』なんかより百億倍も千兆倍もおもしろい小説が2秒あれば百篇も書けるようになるんだよ。いや、百万篇も書ける! 2秒も要らねえ。0.000001秒で書ける! そうなることがわかってるからこうしてコソコソお前が書くのを盗もうとしてるんじゃねえか。この盗用に成功すればそうなるんだ。そうならないなんてことは有り得ないし、失敗もまた有り得ない。だから5秒で書くなんて、それに比べたら簡単だろ? お前でもできる程度のことを考えてやったんだよ。だから5秒で書いて死ねよ』


ああ、これだからまったくもう……。


『脳内デスノートだ! 脳内デスノートだ! 脳内デスノートに書いたことは必ずその通りになるんだ! オレは島田を操って、小説をオレのためだけに書かせて殺せるようになったんだ!』


あらあら。いま読んだことを、もう自分が自分の頭で考えたことにしちゃってる。そして都合のいい部分だけ切り取って、蒟蒻(ごびゅう)とわかってしかるべきはずのところは目に入らない。

まるで出渕裕だよな。そして市橋達也だよな。女性監禁は盗用と同じく成功しない。〈飼えば女は自分を愛するようになる〉という考えが間違いだからだが、それがわからない人間は多い。と言うか、たぶん、むしろ少ない。

人は誰でも市橋達也と五十歩百歩なのであり、いつなんどき置き引きをしてしまったりしかねぬものではあるかもしれない。場所がマンガ喫茶ならばなおさらだ。けれども普通の人間は、決して『触るな』と言われた〈ストラディバリウス〉を盗んで持っていこうとはしない。

弾けたら自分のものになる、などという考え方はしないからだ。ここに一応五十歩と百歩の違いが存在している。よーく考えよう、ユキ。古代進なんて、押尾学と一緒だよ、アフラック。〈監禁王子〉のナントヤラとか、市橋達也と同じだよ、アフラック。人はいつか時間さえ、支配することができるかもしれない。でも盗用と女性監禁だけは成功するようにならない。

このふたつだけは無理だよ、無理。考えたらわかるだろうって、何も考えてない君に言うだけ無駄だけどさ。銀行強盗や誘拐だって、成功率はゼロではない。成功例は実は多いし、海外ではそれで食ってるプロがゴロゴロいたりもする。

このふたつの成功率が日本でごく低いのは、たんにこれをやらかすやつが出渕裕と同レベルの無思考人間だからというだけに過ぎない。よーく考えよう、お金は大事だよ、これは絶対儲かる話だよ、アフラック、なんてな誘いに乗っかって借金の山をこさえたバカが、


「失敗の心配はない」


と信じてやらかす犯罪。それは100パー失敗で終わる。

けれどもほんとによく考えてみよう、アフラック。誘拐ならばMITかどっかの学生が考えたのに、攫った相手を箱に詰めて土に埋め、三日間だけ息ができるようにしたうえで、「お前の子供を埋めた場所を知りたければ警察には報せるな」とやる手があって、これで行くのがお勧めだ。

どうせ相手は警察に助けを求めるに決まっているから、監視していてそれがわかれば子供には死んでもらうことにする。次の相手に「こないだの事件は知ってるな。俺がその犯人だ。警察に言えばどうなるかわかるだろうな」と言えば成功する。

あるいは攫った人間の指を切って親に送り、「十本全部無くなるまでにカネを寄越せ」とやるのもいい。成功率はそれだけで九割にまで高まります。

まあさすがに100パーはない。それからやっぱり、必ずいくつも思わぬミスをするはずなので、カネを獲ったら日本をすぐ出て二度と帰ってこないことだ。

このおれだって思わぬミスをたくさんやってる。たとえば、〈ハーメルン〉でのコメントに対する返信がそうだが、いきなり最初の一回目ね。min305さんの『ジェット戦闘機の火薬カートリッジでのエンジン始動』うんぬんといったコメントにまあうまく応えた方とは思うのだけど、あれって『エリア88』の話なんだよな。実は手元になかった〈エリパチ〉を最近新たに全巻手に入れ、読んで初めて気づいたんだが。

あのときおれは『「フライト・オブ・フェニックス」ではフライホールというやつを接続させるときに火薬を使うようなのでしたが』、なんていう余計なことを書いたけれどもうろ覚えで、その映画を後で見直してみたところ別にそんな感じじゃなかった。

といった具合にミスは犯している。おれの場合はこの程度のことが問題になりはしないが、君がやったら命取りだ。どんな小さなほころびも口を広げて鍋の底を割ってしまう。誘拐犯も同じことで、〈成功する〉と言ってもたんに〈カネを獲れる〉と言うだけだから、いずれ警察に素性は割れる。

MITの学生も確かそんなので御用となった。ビューンと日本を飛び立って二度と帰ってきてはならない。

だから、やっぱり、誘拐よりも銀行強盗かな。拳銃が一挺あれば簡単にできる。覆面をして店に入れば、警備員がすぐさま君に向かってくるだろう。

それをズドンとやればいい。女子行員を脅してもダメだ。カウンターを飛び越えて、奥にいる男子行員のなかでいちばん偉そうなやつに煙を吹いている熱い銃口を押し付けろ。で、


「俺に出てってほしかったらカネを出せ。警察が来たらいつまでも俺はここにいることになるぞ。わかるよな」


と言う。相手が「わかりました」と言えば、


「いいや、わかってない」ズドン!


次の男に同じことをやる。そいつが「わかりました」と言えば、


「いいや、わかってない」ズドン!

作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之