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夏経院萌華
夏経院萌華
novelistID. 50868
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網棚の本~さみしくなったら~

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小さいころからそうだった。根暗。今でいう引きこもり。その一歩手前。
かろうじて学校には行っていた。朝起きるのが苦痛。誰とも話さない毎日。クラスの中で私は存在しない。そんなある日。電車に揺られ、単語帳を開きながら中間テストの勉強をしていた時のこと。ポトリと何かが落ちてきた。
 本だ。少し可愛いブックカバーをされている。裏を見ても誰の物かわからない。中を開け、タイトルをも見ると、
「淋しくなったら」と書いてあった。
今の私だ。と思うつつ。なんか気持ち悪いのでその場に置いて勉強を始めた。
降りる駅にさしかかり、勉強道具を片付けた時、その本も紛れていたことに気付かず、家に帰る。明日の授業の用意をしている最中にそれを見つけ、何気なくそれを読んだ。
読んでいくうちにその物語が私と重なり、涙が出た。
 次の日その本を学校に持っていきその続きを読んでいた。
「ねえねえ。そのブックカバー可愛くない」とクラスでも人気のある女子が私に声をかけてきた。当然私は俯く。それしか反応の仕方を知らない。
だけど、彼女はそれ以来、毎日のように話しかけてくれる。彼女は本が好きなのだ。
「今どんなところ?」と話す彼女。それに答える私。
この本を読み終えるころには彼女と親友になっていた。
そんな時、ふと思うことがあった。
「ああ・・・そういうことなんだ」と思わず笑みがこぼれた。
そして、本の最後に書かれていた文章を読み直す。
「もし、淋しさが消えてなくなったら、この本を網棚に置いてください」
だから、私は次の日、彼女と一緒にこの本を網棚に置いた。了