通り雨
バネ
夕焼けの光が、教室に差し込む。
「人間は、悔しい思いや。辛い思いをすることで、バネにそれが蓄えられて、素晴らしい力を発揮できる、と言われているんだよ」
「なら、溜め込んだもん勝ちですね」
「でも、実際にはそうでもないようだ」
「堪忍袋の緒が切れる、みたいなことですか?」
「いいや、ちょっと違う。バネだ。人間は確かにバネに力を蓄えることができる。でも、限度があるのさ。しかもまずいことに、バネは力を加えられ続けると、遂には逆向きになって、負の力を働かせてしまうのさ。そうやって真っ逆さまに堕ちていった奴らが何人いたか」
「先生はどうなんですか?」
「バネが伸びきってしまった」