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女子外人寮

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信じられない お互い


突然のストライキで俺はどうなる事かとハラハラしていた。
2日経っても2年生と3年生は出社しない。このまま続けば1年生は必要ない。
彼女らの送迎も無くなる。
まだ、まともに仕事を貰ってない俺は、当面の会社にとって絶対必要な時間外無償仕事が無くなる。俺も必要なくなるかもしれない。やっと就職出来たので暫くはここにいるつもりだったのに。

通訳を介して交渉をしているらしいが、どこから情報も入って来ない。
社長の二男で工場長と呼ばれる男、深川治郎に訊いてみようと思った。

彼、治郎は工場長とは名ばかりで、到底そんなマネジメントはできるような男でなかった。俺の見た目では38歳になっても独身で、無口で冴えない男でしかなかった。
作業員は「治郎さん」と名前で呼んでいた。
けれど彼の技術者としての縫製工場での実力は、他の日本人とは比較にならないほど長けていた。中国人のやるミシン作業全行程が完璧にでき、ミシンの修理・営繕など全部彼がやっていた。

「治郎さん、ストライキどうなるんでしょうね?」俺は不安そうなそぶりで訊いてみた。
「いつもの事さ、そのうちなんのとか収まる」と投げやりに俺を見ないで言う。
「治郎さんは、中国語、話さないんですか?」俺は壁を見たままの彼の横顔を見つめて訊く。
「必要ないさ、通訳がいるから」

俺は不思議に思った。もう十何年も中国人達と働いている。なのに全く中国語が解らないなんて。言葉が有る程度解れば、相手の真意が掴めるかもしれない。やっぱり嫌いな中国人と仕方なしに働いているのではないか。俺はそう感じた。
彼が研修生と話したのはこの1ヵ月一度も見たことない。彼女達は仕事グループに必ず1人居る日本人班長を通して作業指示を受けていたのだった。

そう言えば彼から盗難事件の話を聴いた事を思い出した。
工場で使う道具で少し高価なものがあった。それが紛失して大騒ぎになった。
犯人探しが始まった。みんな机や作業台を調べられた。
有る研修生の作業引出の奥にそれは見つかった。当然彼女が疑われた。
彼女はそれが自分の所から発見されとことについて一切知らない。誰かがここに入れたに違いない。そう言いきったと言う。
『あいつに絶対間違いないのに・・だから中国人は嘘つきだ。正直に謝らない!』

交渉はどうなったか不明だった。ただストライキは二日目で中止された。社長は首謀者とみられる3年生の一人、リランという研修生を、スト2日目に突然中国に帰国させたのだった。どんな理由をつけたかは、俺には解らなかった。

ただ、この次におこるストライキが
この会社と工場長の治郎さんを窮地に陥れるなんて知る由もなかった。
作品名:女子外人寮 作家名:桜田桂馬