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愚者(ぐしゃ)

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愚者
作 松下 靖

こんな男・古井和夫

今日も朝から売上から札束を適当に抜いて始まる
古井和夫五十五歳・・親が始めたパチンコ店を運営し始めてもう二十年近くになる
店舗は3店舗、5店舗までは拡張したが凡才の為2店舗は大赤字で閉店に追い込まれた
それでも今でも3店舗で年商一四〇億はある、もっとも年商であるからまるまる彼の会社や個人の利益ではないが彼の手元には役員報酬として月に200万は正規ルートで手にする、あえて正規ルートと書いたのは冒頭のように彼は店の売上から適当に札束を抜き自分の懐に入れたり取引業者からバックマージンをもらうので実際の彼の年収は不明である。
彼はお金を自分だけ手に入れる事に執着し常に疑心暗鬼なので周囲に着く人間の年数は長くても付き合いは浅い・・・と言うべきか相手から距離を置かれて行くのである。女も好きだが付き合い方や考え方は中学生より劣るのでお金目当ての女性以外は彼に長くは付き合えない・・だからいつも店のアルバイトの20代の女性やお金に困っていそうなパートの女性に手を付ける、早くに結婚したが中学生にも劣る男が結婚など長続きするはずもなく新婚旅行を済ませて間もなく離婚したらしい。性欲は盛んだが年相応の技術がないので女性を満足させることが出来ずさすがのお金目当ての女性陣も欲を持て余しその部分は他の男性を求めそれがまた彼に発覚し激しく嫉妬されうっとおしく感じると彼から離れて行くのである、しかも別れ際には必ず彼がせこく選んだプレゼントを返せと捨て台詞を吐かれて・・。せこいプレゼント・・そう彼は女性へのプレゼントは必ず中古品である。
それでも彼は自分は素晴らしく賢い人間であると自負し周りの人間をバカ扱いする、このような人間がこの会社では役員として3人兄弟で君臨しているのである・・
3兄弟は互いにお金飲の亡者でありキツネとタヌキの化かし合いのごとくここの利益を得ようと周囲の人間を巻き込み店舗運営をそっちのけでゴルフと夜の歓楽街に日々繰り出すのである。ゴルフ関係者にとってはおだてればどんどんお金を垂れ流す良い客ではあるがその代りに金を使う分以上の罵詈雑言を聞かなければならないという嬉しくない特典が付いてくる皆景気さえ回復すればいつでも去って行きたいと思うのが本音である。
不景気でも一般の企業よりは泡で儲かるパチンコ業・・もちろん節税対策はもれなく行っているので実際の数字なんて誰も把握出来ない。だから彼らはこぞって新車を買いまくる・・子供がミニカーを買うかの如く、形が良いから買った・・色が好きだから買った・・有名俳優も乗っているから買った・・・飽きたから売った・・新しいモデルが出たから売った・・付き合う女性が好まないから売った・・・売買の理由は適当とりあえず目の前のモノが欲しいから買う、別にポリシーも何の主張も無い単に気分次第って事である
作品名:愚者(ぐしゃ) 作家名:松下靖