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夏経院萌華
夏経院萌華
novelistID. 50868
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バースディ~生まれてくる子供とその母へ贈る~

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いつからだろう・・・。

こんなに母が嫌いになったのは・・・。

あんなに優しかった母が・・・。

いつからか、私のやることすべてを否定した。

「女はいい人と結婚して子供を産むことが幸せなのよ」

私はそれがわからなかった。そしてそれに反抗し勝手に家を飛び出した。

なのに・・・・・・。

私は今、家に舞い戻っている。

母は黙っていつものようにご飯を作り掃除をする。

相変わらず、私とは目を合わせてくれない。

私が悪いわけじゃない。

そう言い聞かせて、なるべく母とは違う時間を過ごした。

ある時、私は母と大げんかをして頬を叩いてしまった。

まずい。と思ったときには母の瞳からは大粒の涙を流し、部屋にこもってしまった。

私は母のいる部屋の前に居た。

扉は固く閉ざしているようだった。

鍵がかかっているわけではないのに、なんだか鍵がかかっているかのように

私は開けることができなかった。

「とりあえず。叩いたこと・・・ごめんね」とだけを言いその場を去った。

夕方、母は夕食の準備のため降りてきた。

私は何も言えないまま、居間に居た。

父は黙って新聞を見ていた。

「お父さん・・・」

私はすがる様に涙を流し一言だけそう言った。

すると父が新聞を綴じ、私の頭を撫でた

「ちょっと来なさい」父が書斎に私を招く。

父が天袋からガサゴソと一冊のアルバムを取り出す。

父は何も語らず、一枚ずつそれをめくる。

私はそれを初めて見た。

母と父の写真。今よりもずっと若かった。

色あせていた写真がページをめくるたびに、鮮明になっていく写真。

母が座っている。そのお腹はふっくらとしていた・・・・私だ。

私を抱く母の写真。その顔はすごく嬉しそうだ。

やがて、父と母二人だけの写真はめっきり少なくなり、

私の写真だけで埋め尽くされる。

最後のページ・・・・・

私がこの家を出ていく少し前に撮った写真だ。

そこには何かで濡れてシミができていた。

私はそれを撫でる。

「お母さんはな。お前が帰ってくるのをずっと待っていたんだ」

私は父の顔を見る。

「お母さんな。元々、体が弱かったんだ。でな。お前を身ごもった」

私はそんな話は初めて聞いた。

「そして周りの反対を押し切ってお前を産んだんだ。」

「命がけで産んだお前をどうして嫌いになれるんだ」

「本当はお前だってわかっているんだろ」

それを聞いて、私はアルバムを閉じ、母の元に向かった。

母は相変わらず、台所で調理をしていた。

私は母に抱きつき、

「お母さん。ごめんね・・・そして産んでくれてありがとう」

「もう、支度の邪魔だからあっちに行ってなさい。今日はあなたの好きなハンバーグよ」

と言うと、母はおもむろに玉ねぎを切りだした。了