透明な音符【詩集5】
透明な音符
雨は空から落ちてくる透明な音符だと言ったのは
誰だったろう?
時にはさらさらと
時には激しく
時にはしとしとと
時には轟々と
空から無数の音符が落ちてくる
木々を濡らし
草を濡らし
建物の屋根を濡らし
アスファルトを濡らす
透明な音符が空から降ってくる
次から次と休みなく
どこからやってくるのか
遠い空の上にはなにも見えない
太陽の光を薄く透かした
灰色の雲の中から
透明な音符が
次から次へと落ちてくる
看板を濡らし
公園を濡らし
地面を濡らし
私を濡らす
透明な音符が降ってくる
頭のてっぺんからつま先まで
さらさらと私を洗い
流れ落ちていく
涙も一緒に流れされていく
誰の為に泣いているのだろう
何のために?
誰も私を捜さない
私はどこにもいない
雨に溶けて流れて消えていく
透明な音符に混ざって
作品名:透明な音符【詩集5】 作家名:maki