透明な音符【詩集5】
握りしめた手のひらに
握りしめた手のひらをそっと開く
強ばった指は中々開こうとせず
私は苦労して指を一本一本開かせた
長い間ずっと握りしめていたのだ
それがさも大切な宝物のように
出てきたのは
怒りとか憎しみ、妬み、そねみ……
闇の底のように真っ黒なものたち
それはどろどろと
開いた手のひらから流れ落ち
空気に触れるとふんわりと溶けて
きらきら光りながら消えた
本当はもうずっと前から
握りしめておかなくてもいいんだと知っていたのに
君が助けてくれたから
ようやくお別れできたみたいだ
ありがとう
作品名:透明な音符【詩集5】 作家名:maki