透明な音符【詩集5】
今もここにいる
深い闇の奥に落ちていく
おまえなんか死ねばいい──
そんな言葉が闇に浮かび上がる
そうだね
あの時死ねばよかったね
どうして生きてるんだろう?
自分にそう問いかける
深い闇の底に向かって
どこまでも落ちていく
終わりのない世界に
風が吹く
濃密でねっとりした闇を切り裂く
ひと振りの刃
それはきみの声
腕を鋭く捕まれ
引きちぎられてしまいそうな痛みが突き抜ける
諦めちゃだめだ
死んじゃだめだ
生きろ!
絶対行かせない!
そう叫ぶ声が聞こえる
私は耳を塞いだ
何も聞こえなかったことにしようとした
だが望まない助けの手は
振り払おうとしても離さない
どうして
どうして?
どうして!
頼んでない
望んでない
戻りたくない!
手を離して!
…
……
………
あれは……何だったんだろうか
夢?
錯覚?
それとも狂気?
震える心が見せた幻?
ひとつだけ分かるのは
私は今もここにいる
ただそれだけ
作品名:透明な音符【詩集5】 作家名:maki