華蜂 その1
それを人は知っている。
いつかどこかで出せるさ。
そんな何かを。
紅バラの中で目が覚めた。
辺りは、甘い匂いに包まれ、私は高揚感が湧いてきた。
すでに昼頃か、花時計の長針が菊をさし、時間を示している。
「ふぉあっ。よく寝たわ、よーいしょっと」
私は体操を欠かせなくする。
背中に生えた透明の羽を広げ、その場でゆっくり上昇し、ゆっくり下降する。
その動作を繰り返し往復させ、羽の動きを柔らかくする。
私の羽がやっと思い通りに動くようになった。
「さぁ、いこう。どこにいこっかな」
私は、準備運動をしたものの、どこにいくべきか迷いに迷う。
今日の予定がないこともあり、友人の元に押し掛けることにした。
その友人は、本日蜂蜜の搾取組のため、昼寝をしている最中だった。
「ケディウス!」
「エミリア。また学校をサボったのか」
「サボったんじゃないもん。お寝坊だもん」
「どっちも同じだろう」
「オースティンにバトロアで負けたんでしょ? 」
ケディウスは搾取組のため、見習いだが搾取量はトップ1、2を争う出来で、
オースティンとの一騎打ちにいつもなる。
「負けたよ。おいおい俺がそんな潔の悪い奴かと思ったのかよ?」
「そうじゃなくて……」
「そんな邪蜂でもあるまいし。でも次は倒す」
ケディウスの目は青白く輝いてるかのようにおもえた。
迷いのないこの眼に私はいつも自然と期待を抱いてしまう。
私のようなメス蜂にこの競技は参加できない。
そうでなくても、彼を応援したい気持ちがどこかにあった。