二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

INDEX|37ページ/46ページ|

次のページ前のページ
 

Epilogue:again 枯れない桜の奇跡



「それでは、百年越しの再開を祝して!」
『乾杯!!』
 五月五日。
 俺達は初音島にある枯れない桜の木の根本でお花見をしている。
 先日、枯れない桜の調査のために訪れ、ここにいる公式新聞部全員で桜の幹に触れた時、後半部分が文字化けしたメールが全員に送られた。内容はこうだ。
『桜が咲いたらあの場所で―』
 その送信日は、今から約百年前となっていた。そしてそれを調べるために奔走し、原点回帰として枯れない桜をもう一度見に行った時。俺達は芳野さくらという女性から全てを聞き、全てを思い出した。
 イギリスはロンドン、その地下に存在する通称風見鶏と呼ばれる魔法学校の存在。そこに通っていた俺達六人の前世の記憶を。また最後に交わした約束の事を全て思い出したのだ。
 その約束の内容とは。
『桜が咲いたらあの場所でお花見しようね!』
 というものだった。全てを思い出した俺達にとってそれは、立夏さんらしい物だと思った。
「清隆?」
「タカくん?」
「兄さん?」
「先輩?」
「清隆さん?」
「うふふ」
 ……と、いろいろな事を思い出していたら、ループ中に起こったことについて五人から睨まれ、さくらには笑われてしまった。
「あー、えーっと……。ちょっとトイレ行ってきますね」
「ああっ、逃げたー!」
 俺はいたたまれなくなり、その場を離れようとする。
「わぶっ」
 しかしその途中で誰かにぶつかり、その願いが叶うことはなかった。
「おいおい、それはないんじゃないか、清隆?」
 ぶつかったその人は、俺達にとって懐かしく、そして変わらない姿のあの人だった。





 ロンドンで起こった、かの半永続的ループからおおよそ百年。
 俺は未だに初音島で過ごしていた。
 ただし、今は一人ではない。共に住むその人は、今は家で色々と準備をしているらしい。
『先に行ってて』
 俺はそう言われて追い出されたので、さくら越しに聞いた花見の場所を訪れようとしていた。何度か初音島を離れてその度に桜が散ったり咲いたりしているのを見たが、その訳を直接見たわけではない。
 非公式新聞部が遺している情報や新聞の記事などで大体何が起こっていたのかはわかったが、それでも疑問は多々あった。……だが俺はそんなに気にしていなかった。
 それよりも大事な事が、最近ようやく叶ったからだ。
 そんな考えを巡らせながら歩いている最中だった。
「あー、えーっと……。ちょっとトイレ行ってきますね」
「ああっ、逃げたー!」
 先に始めていた人間の輪の中から一人こちらへ駆け出してくる。……大体話は読めたので、食い止めてやろう。
「わぶっ」
 俺はわざと彼にぶつかり、俺と彼、両方の痛みを和らげる魔法を使ってやった。
「おいおい、それはないんじゃないか、清隆?」
 そして苦笑しながら彼を宥めた。
「ゆ、ユーリさん!?」
 案の定彼―芳野清隆は驚く。
 どうやら転生しても苗字は変わらないらしい。珍しいな。
「えっ、ユーリ!?」
「うわー、久しぶりですね!」
「えっと、お久しぶりです」
「ユーリ……。もしかして、<失った魔術師>のユーリ・スタヴフィードさんですか!?」
「ユーリさん、ご無沙汰してます」
 三者三様……いや、五者五様か。それぞれ違う反応をする転生した者達。そして。
「よう、さくら。サプライズ成功だな!」
「うん!大成功だね!」
 さくらが俺にぱたぱたと近づき、俺は彼女とハイタッチを交わした。
「えっ、さくらがユーリさんを誘ったのか?」
「うん、そうだよー」
 清隆の問いに答えるさくら。うわっ、めっちゃ似てる。当たり前だけど。
「まあ、お前らが転生する前にさくらが帰ってきた時に、事の顛末と約束の事を聞いたんだよ」
「つまり、ユーリは全部知ってるの?」
「ああ」
 そもそもループ中の記憶全部あるけどな。だがそれをどうやって解決したかなどは知らなかった。
 そんな時に二度目に起きた枯れない桜の事件で失踪したさくらが帰ってきた。俺はそのさくらに事の顛末を聞いたのだった。
「それともなんだ?俺達が花見に参加するのがダメだって言うのか?」
「全然ですよ!ねっ、みなさん」
 俺が嫌みを言うような視線を交えて言ったことに、葵は何も言う事なく受け入れようとしてくれた。
「もちろんよ!色々話も聞きたいし」
 リッカを筆頭とし、他の全員からも許可をもらえた。
「まあ、話せないことはあるがな」
 ただ……。
「でもユーリさん、"俺達"って言いませんでした?」
 さすが清隆。俺の言葉に含みがあるのに気づいたらしい。
「ああ、言ったぞ。……もうすぐ来るはずなんだがな」
 そう言って俺が来た道を振り返ってみると。
「ユーリさーん!そこにいるー?」
「ああ、いるぞ!」
 茂みに開いている獣道から聞き慣れた声が聞こえる。ようやく茂みを抜けると、彼女は俺に抱き着いてきた。
「まったく、しょうがないな……」
「いいでしょ、これくらい?」
 俺はそんなやり取りを交わしながら彼女の頭を撫でる。
 そんな様子をぽかんと見つめる六人。特に驚く清隆と立夏。そして笑顔のさくら。
「あの、ユーリ、もしかして」
 リッカが恐る恐る訊く。
「ああ、お前達が考えている事で大体あってる」
 俺は一呼吸置き、告げた。
「紹介しようか。彼女は一条可憐。わかると思うが、あの時のカレンの転成した人だ」
 話は五年前まで遡る。
 俺が初音島での日常を送っていた時。両親の仕事の関係で初音島に引っ越してきた可憐に俺は出会った。
彼女は俺の姿を見た瞬間『ユーリさん、久しぶり!』と、言い放った。
 幸いその時は彼女一人だったため、話を聞くために側の喫茶店へと入った。
 聞くとどうやら、物心ついた時には前世の記憶について理解しており、小学校を卒業する頃には記憶の内容の整理を終えていたらしい。つまり、だ。
『私はユーリさんにされたこと、全部知ってるよ』
 ……とのことだ。
 まったく恥ずかしいかぎりである。……いや脅す気なんてサラサラないだろうが。
 話を聞くかぎりでは、今の両親とはずいぶん仲がいいらしい。前世の時の養父たちと同じくらいだそうだ。
 その後可憐の両親に紹介してもらい、同じ時を過ごし付き合い直した。
 その間に俺は俺にかかった禁呪を解呪した。解呪には成功し、膨大な魔力は残ったものの死ねない呪いは無くなった。ただし代償として魔法が使えないままなのだが、そんなことはすでに魔術という方法で解決済みだし、それに、もう魔法は必要なとき以外は使わないと決めていた。
 そして先日同棲の許可をもらって、今に至る。
 ちなみに彼女の両親の中では俺と可憐は同い年ということになっている。
「……と、こんなところだ」
「つまり、ユーリさんと可憐さんも、百年越しで再会出来たというわけですね」
「そういうことだ」
 シャルルが手を合わせて納得する。どうやらこの時代では、シャルルと清隆は親戚同士ということらしい。逆に姫乃とは幼なじみの関係とのことだ。
「なるほどな。この島には元々清隆、立夏、姫乃の三人が過ごしていたわけだが、よく俺も気づかなかったな」
「私は気づいてたけどね……」
「マジかよ、言えよ」
「だって見間違いだったら困るし」
「それもそうか……」