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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
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D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

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After da capo:Lost wizard <失った魔術師>



 次第に地面が見えてくる。そこには風車に似た建物が一番に目に入ってくる。
 俺は地面を見下ろしていた。
 今俺が乗っているものはエレベーター。魔力で動く、魔法のエレベーター。そいつは、今眼前に広がる地下世界へと向かっていた。
 ここは学園都市。王立ロンドン魔法学校、通称『風見鶏』のある、学園都市だ。





 地面に降り立った俺は、真っ先に風見鶏の職員室へ訪れ、帰ったことを告げた。皆様子は変わらないようだ。それに疲れているのだろうと俺に「すぐに戻れとは言わないよ。一週間くらい休んでくれても大丈夫」と言ってくれるくらいだ。有り難く休ませてもらおう。
 俺は職員室を後にし、校舎の最上階へと向かった。ある人物に昨日書き上げた報告書を渡すためだ。
 全くあの野郎……。いつになっても人使いが荒いんだよ……。そんなことをぼやきつつ目的の部屋へと向かう。階段を上がるとすぐだ。そこは学園長室。用があるのは無論学園長だ。俺はその扉をノックした。
「失礼するぞー」
 声とともにその扉を引く。
 案の定そこでは数人ほどの学生が作業をしていた。しかし目的の人物がいない。
「あの……どちら様ですか?」
 そこにいた一人―予科の男子学生が俺に声をかけた。
「ああ、エリーに用があるんだ」
「エリー……と言いますと?」
 男子学生が聞き返す。
 しまった、これは内輪だけだったな。
「エリザベス学園長だ」
「あっ、やっぱりか!」
 俺が目的の人物の名を告げると、一人の女生徒が突っ掛かってきた。ふむ、最後に見た時から少し成長したか?どうやら加齢を抑制する魔法を解除したらしい。
「よう、リッカ。久しぶりだな」
「あれから半年か。……って、いつ帰ってきたのよ」
 リッカ―リッカ・グリーンウッドは俺に詰め寄って聞く。<孤高のカトレア>と呼ばれる彼女は俺の旧友であり、二年半ほど前にここで会った時は俺もびっくりしたものだ。
「昨日だよ。正確には、ロンドンに着いたのが昨日。昨日は市内のホテルで……」
 やべぇ、語尾に欠伸をつけてしまった。これだと絶対に……。
「ホテル!?ホテルで何したの!!?」
 ほーら誤解したぁ……。
「ちげーよ馬鹿。ただ泊まっただけだ!」
 とりあえず誤解が解ける言葉を言っておこう。……と、そんなときだ。
「あの……リッカさん、その人は?」
 さっきの少年(?)がリッカに聞く。
よかった、これで話の流れが変わる。
「あー、そういえばあなたには紹介してなかったわね」
 リッカが少年のほうを向き、俺を指差して言う。
「彼はユーリ・スタヴフィード。この学園の本科二年で、元生徒会役員よ」
「丁寧な紹介どうも」
 俺は少年に向かって頭を下げた。
「紹介に預かった、ユーリ・スタヴフィードだ。以後御見知りおきを」
 俺は簡素に挨拶をした。
「ユーリ・スタヴフィード……って、カテゴリー5の<失った魔術師(ロスト・ウィザード)>じゃないですか!!」
 少年が驚く。
「なんでカテゴリー5ともあろう方が風見鶏にいるんですか!」
「それ、私の時も言ったわよね」
「二人目じゃないですか!」
 言い意味でいつも通りのリッカと慌ただしくうろたえる少年が軽目に言い合う。リッカとこれだけ言い合えるなんて、エリーや俺以来だな。
 なんてことを考えていると、現生徒会長が俺に話し掛けてきた。
「あの、少しうるさくなってきたので、ホントのことを話してみては?」
ふむ、それもそうか。
「おーい、そこの少年」
「えっ」
 俺は手を叩いて二人のいさかいを止め、少年を呼ぶ。
「えーっと、名前は?」
「葛木清隆です」
「清隆よ、実を言うと、俺もリッカと同じ理由でここにいるんだよ」
「……もしや、学園長に最初は教師として誘われ、最終的に生徒として落ち着いたと?」
「そういうことだ。ただし、俺はすぐに準備が整ったからリッカより一つ上なんだよ」
「なるほど……」
 どうやら理解してくれたようだ。これで一安心か。
「まあ、一応基本的に寮にいるし、なんかあったら声かけてくれや」
「じゃあ、前の任期にやり残した仕事をやってもらえますか?」
 そういって人の進路を塞いだのは巴だ。くっ……こんなスキルばっかり身につけやがって。これも杉並のおかげか……。後で説教をしておこう。
「……分かったよ。何が残ってる?」
 俺は諦めて巴の話を聞くことにした。本気を出せば脱出できるが、それはそれでめんどくさい。
「今度の生徒会選挙で、挨拶をしてもらえますか?」
「なんだと?」
「だって、夏期休暇が始まる少し前にイギリスを発ってそれ以降はシャルルに任せっきりだったじゃない」
 口を挟んだのはリッカだ。くそう、覚えていやがったか。
「仕方ねーだろ。文句ならエリーに言え」
「言いましたよ。そのうえで学園長は判断はこちらに任せるとおっしゃいましたので」
「お願いね、ユーリ」
「……」
 俺はため息を吐いた。どうやら、腹をくくるしかないようだ。
 ……結局、報告書は出せなかった。
 それに一人こちらを睨んでたやつもいたな。なかなかに不幸だ。



   ◆   ◆   ◆



 その夜。
 俺は生徒会役員の数名とケーキ・ビフォア・フラワーズ―通称フラワーズへと来ていた。どうやら色々と話が聞きたいらしい。面子は俺、リッカ、シャルル、巴、清隆の五人だ。まあ、いつも食事する面子らしいのでおかしな所はないようだ
「……それで、なんで半年もかかったのよ」
「あん?」
 リッカが俺に話しかける。おそらく今回の仕事の件だろう。
「仕方ないだろ。世界中回ってたんだから」
「世界中?女王陛下の依頼で?」
 巴が驚いた声を出す。どうやらリッカを含め、ここにいる全員が仕事については何も聞いていないようだ。いや、清隆は当然か。
「どんな依頼だったんですか?」
 清隆が聞く。
「それは守秘義務があるから言えん」
 これに関しては事実だ。非公式新聞部に関する事もあるし、下手なことは言えない。
「……ちなみに聞きますけど、ユーリさんが本気を出せばどれくらいで終わった仕事でしたか?」
「本気を出してこの期間だ」
 シャルルの問いに俺は即答した。
「ユーリが本気を出してこの期間って……」
 リッカは腕組みして考えている。まあ、嘘なんだがな。これ以上詮索されたくなくて吐いた嘘だ。
「で、でも、ユーリさんって前生徒会長だったんですね」
 空気を読んだらしい清隆が話を変えた。グッジョブだ、清隆。
「ええ、そうよ。基本的に本科一年が生徒会長を務めることになってるの。その生徒会長は、年度末の選挙でその年最後の生徒会役員と一緒に学園長によって選出されるの」
「なるほど……」
 清隆が巴とリッカを交互に見て納得した。
「……何よ?」「何だ?」
 二人が同時に反応する。
「あ、いえ。少し納得しただけです」
 まあ、そりゃそうだよな。この三人の才媛の中で一番人望が厚そうなのはどうみてもシャルルだからな。
「まあいいわ。あとでお説教だから、覚悟しなさいよ清隆」
「うっ」
 少しドスの効いた声に清隆の腰が引けた感じがした。仕方ない、助けてやるか。
「……ところでさ、もしかして清隆とリッカって付き合ってんのか?」