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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
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D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

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After da capo:Cherry blossom 春風に願いを



 五月五日。
 日本では"子供の日"と呼ばれ、国民の祝日となるこの日。
『Happy birthday!!リッカ(さん)!!』
 この日は、リッカの誕生日だった。そんなわけでフラワーズを俺が貸し切って生徒会役員プラスαを呼んでパーティーを催していた。
「あ、ありがとう」
 だが、当の本人はあまり嬉しくなさそうだ。
「どうしたリッカ、らしくないな」
「う、うるさいわね……」
 ……ああ、なるほど。
「お前、いまさら歳気にしても何もないだろ」
「うるさい!!私は気にするのよ!」
「冗談だ、リッカ。からかっただけだ」
 むぅ、と、リッカの顔が膨れる。その様子を彼氏の清隆が宥める。
「うわーん、ユーリがいじめるー」
 ……おいコラ、何自然に清隆に甘えようとしているんだ。見てるこっちが微妙な気分になるだろ。
「ちょっ、リッカさん!人前では恥ずかしいですって!」
 ……といいつつも清隆が邪険にあしらったりしない。なんだかんだ言って、清隆も甘いな。あっ、その隣で姫乃が嫉妬しているぞ!それでいいのか清隆!
 ……俺は何ともいた貯まれず、彼女に話しかけた。
「やあ、葛城の娘さんだったかな?お父さんは元気か?」
「あ、はい。……えーっと……」
「ユーリだ。ユーリ・スタヴフィード。一応葛城の親父さんの知り合いだが、今ここでは風見鶏の元生徒会長って言った方が早いか」
「いえ、それよりもカテゴリー5の一人と言った方が早いのでは?」
 俺が自己紹介をしていると、巴が口を挟んできた。
「それもそうだが、清隆からは箱入り娘だったと聞いているぞ」
「……間違いではありませんね」
 あっ、間違いじゃないんだ。
「姫乃、この人が葛城のおじさんの知り合いだというのは本当だ。安心しなさい」
 未だに不安な顔を浮かべる姫乃に巴は優しく説明した。……あれっ、何だろうこの悔しい気分。まあいいか。
「とりあえず、お父さんは元気か?最近じゃ半年ほど前に会ったきりなんだが」
 これに関しては事実だ。清隆達がロンドンへと旅立ったあと、俺はウィザリカ解体のために日本に立ち寄った際に、葛城の家の世話になっている。
 それ以前にも何度か世話になっており、自身らは覚えていないだろうが幼少の頃の清隆と姫乃にも会っている。
「えっと、先週くらいにお父さんから手紙が来たんですけど、元気にしてるって、書いてありました」
「ならよかった。……ところで」
 俺は振り返り、言い放つ。
「杉並、リッカはお前を呼んでいないはずだが?」
 俺は目一杯嫌な顔をしてやる。
「まあそういうな、スタヴフィード殿。陛下から偶の休暇をもらったのだ。どう使おうと問題はないだろう」
「くれぐれもリッカにはばれるなよ」
「わかっている」
 ……まったく、隠密行動だけは一級品なんだから、それを他のところに活かせってんだよ。
 ……ああ、そうか。だからエリーに非公式新聞部にスカウトされていたのか。なるほど、いまさらながら合点がいった。
「まあ、放っておけばいいか」
 後で巴が何とかするだろう。
「悪い、姫乃。俺の彼女が睨んでるから戻るわ。親父さんによろしく言っておいてくれ」
「えっ?あ、はい……」
 ……ふむ、少しおどおどした感じがするのは人見知りしているからなのだろうか。
 まあ、なんにせよ話せてよかった。
 そう考えながら俺はカレンの元へ向かう。
「……他の女の子とお話できて、楽しかったですか?」
 ……うわー、拗ねていらっしゃる。
「……悪かったよ。……つっても、姫乃の場合は俺の知り合いの様子を聞いてただけだし」
「どうだか」
 ……まあ、仕方ないか。
 俺はカレンの頭を撫でる。
「……なんですかぁ」
 口では怒っているようだが、顔は嬉しそうだ。
「最近構ってやれなくて済まなかったな」
「いえ、ユーリさんが悪くないのはわかってます」
「それでも、だ。……実際、俺もお前に構ってないと俺が俺でどうにかなりそうだったからな」
「ユーリさん……」
 カレンはそのまま、俺に身を委ねていた。
「……ちょっと」
「うわっ」「きゃっ」
 突然かかった声に、俺とカレンは驚く。その声の主は、今日の主役だった。
「……なんで私を差し置いて二人だけの世界に入っているのかしら?」
「いやー、見てないと思って」
「あはは……」
「見てるに決まってるでしょ!」
「「ですよねー」」
 俺とカレンの言葉がハモる。
「……正直、羨ましいわ」
「何がだ?」
 遠い目をするリッカに俺は訊く。
「あなたたちがよ。私と清隆は、私が忙しいせいで清隆に構ってあげられていないの。それに比べてあなたたちは、いつでもいちゃいちゃと……」
「おい、途中から私怨っぽいものが含まれてるぞ」
 俺が指摘すると、リッカはコホンと咳ばらいをしてつづけた。
「ともかく!私は、貴方みたいに余裕がないから、清隆を満足させられてないって思って……。それが羨ましいって言っているのよ」
 ……あー、なるほど。つまりそういうことか。
「……なあリッカ、俺は言うほど暇じゃないぞ?」
「えっ?」
 驚いた顔をするリッカをよそに、俺は続けた。
「なんというか、俺はここ最近お前と一緒に仕事していただろう?つまり忙しさは同じだ。加えて、お前と同じくエリーからの勅命もある。仕事の量はあんまり変わらん」
 俺は、呆れたような顔をして続ける。
「ただ違うのは、効率だな」
「効率?」
「ああ。俺はやるべき事はしっかり、なおかつ迅速に終わらせている。だからお前の分の仕事を上乗せしてやっている」
「私の仕事がたまに減ってるのってそういうことだったのね」
「それはいい。まあ、つまりもうちょっと効率考えて仕事しろって事だよ」
 リッカは黙り込んでしまった。
 まあ、確かにリッカは生徒会に自分の研究と、やることは多いだろう。だがそれで清隆がどう思っているか。そんなの、本人しかわかるまい。
「おーい、清隆!」
「あっ、はい」
 杉並に絡まれていた清隆を俺は救出して連れて来る。
「葵、杉並は頼む」
「了解です!」
 とりあえずこれでしばらくは大丈夫だろう。
「なんですか、ユーリさん」
「いやー、実はさぁ……」
「ちょっとユーリ!」
 リッカの制止は耳に入れずに事の顛末を清隆に話す。
「……あー、なるほど……」
 聞き終えた清隆は、少し怒っている様子だった。
「リッカさん」
「なにかしら」
「怒りますよ」
「……!?」
 やっぱりな。清隆は俺の思った反応しかしないから面白い。
「俺がいつ満足してないなんて言いました?」
「えっ、だって最近構ってあげられなかったし……」
 リッカの言い分に、清隆は大きなため息を吐く。
「リッカさん、俺がいつ満足してないなんて言いました?」
「……言ってない」
「ですよね?だから敢えて言いますけど」
 清隆は少し間を開けて言う。
「俺は、リッカさんのそばにいられるだけで満足なんです。俺の好きな人が、俺のそばにいてくれるだけで幸せなんですよ」
 言った瞬間、二人の顔が赤くなった。そして、周りのやじ馬共から歓声が上がる。
「うわっ、恥ずかし」
「ちょっとユーリ!これ分かっててやらせたでしょう!」