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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

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After da capo:Vacation それは休暇ではない



 あれから十日後の三月八日。
 俺は職場復帰を果たした。……とは言え、残っている事など、予科二年B組の面倒をあと少し見ることくらいだ。
 しかし……だ。
「ユーリさん、あと二週間足らずで春休みですよ」
「知ってるよそんなの」
 一緒に登校するカレンに冷静に言われた。
「まあ、お仕事で半年も開けていては、仕方ないかもですけど」
「聞き捨てならないなカレン。俺はこの十日間、出来る限り甘やかしたよな」
 ……仕方なかったんだよ。久しぶりに会ったカレンが可愛すぎたんだよ。もうどうしようもないくらいに。
 ……大丈夫です。えっちな事はしてません断じて。……あ、一緒に風呂入ったわ。湯気なんて一切存在しなかったわ。湯気さんお仕事してないわ。でもそれだけだぞ?
 ……閑話休題。
「いえ、その事を言っているのではなくてですね。てか、全然関係ないです」
「……じゃあなんだ」
「……春休み、帰省するんですか?」
 ああ、なるほど。……だがな。
「いや、俺帰るところないし。親戚っつっても、俺なんてひいひい祖父さんくらいの年だぞ。……いや、もっとか」
「……つまり?」
「寮に篭りきりかな。あまり人のいない寮は静かだし」
「じゃあ、私も残ります。あの時の本、まだ読めてないのありますし」
 あの時の本とは、一年半ほど前にカレンとともに王宮図書館にとりにいったものだろう。確かに、まだカレンが手を付けていないものもあったな。
「まあ、お前の好きにすればいいさ」
「そうします」
「……と、カレン、今朝は生徒会で会議があるんじゃないのか?」
「あっ」
 微笑むカレンははっとした様子で我に帰る。
「早く行け」
「はーい。じゃあ、夕方頃お邪魔しますね」
 そういうとカレンは走っていった。
「……割と元気だな」
「そうね」
「元気なのはいいけど、少し心配になるよ。……なんだろう、こう保護者的な感じか?」
「保護者どころか彼氏でしょ」
「それはそうだったって、リッカ!いつからそこにいた!」
いつの間にか隣にリッカがいた。
「いつからってそんなの、『あと二週間足らずで春休みですよ』の辺りかしら」
「ほとんど全部じゃないか」
 もう突っ込む気力もなかった。
「そういえば、清隆は?」
 俺はリッカに彼氏の所在を聞いてみた。
「今日は姫乃と用事があるらしくて先に行ったわ」
 顔が笑ってない。嫉妬しているんだろうか。
 ……そういえば、姫乃といえば清隆の義理の妹か。まあ、義妹でも嫉妬の対象にはなるよな。いや、義妹だからか。
「まあ、とりあえず会議あるんだから早く行けよ」
「そうだった。じゃあね、ユーリ」
 そういうとリッカは急いで行った。……時間的に危ないんじゃないか、リッカよ。
 ともかく俺は自分の受け持つクラスへと急ぐ。やるべき事は沢山あった。





 放課後。
 1年B組のホームルームを終えた俺のシェルに着信があった。
「テキストか」
 俺はテキストを開封し、中身を見た。


 <差出人>リッカ・グリーンウッド。
 <題名>大至急!
 <本文>
 はーい、ユーリ。
 ちょっと用事があるから今すぐ生徒会室まで来てもらえない?
 拒否権はないわよ。
 じゃあね。


 ……これは。
「まーためんどくさいものを寄越しやがって」
「あっ、ユーリさん、まだいた」
 ため息を吐いていたところにカレンがやってきた。最近髪型をポニーテールにした様で、ぴょこぴょこ揺れる髪がまた愛らしい。
「どうした、今から生徒会室に行かないといけないんだが」
「そのことですよ。リッカさんから『何としても連れて来い』って言われたので」
 ………………。
 どうやら俺の唯一の弱点を利用して何としてでも俺を来させたいらしい。そんなことしなくても行くっての。
 俺はカレンの頭に手を乗せてそのまま撫でて。「今から行くつもりだったての。一緒に行くか?」と言う。
 するとカレンからは何の迷いもなく「はい!」といい返事が返ってきた。うん、やっぱり今日も可愛いな。
 というわけで、俺達は足早に生徒会室へ向かう。
「なあ、なんで俺は呼び出されたんだ?」
「えっと、今朝の会議で決まったことなんですけど」
 ……何か嫌な予感がしてきた。
「選挙の日、シャルルさんの代わりに挨拶をしてほしいということになってですね」
 ……やはり巴は覚えていたか。まあ、こうなるのは致し方あるまい。
 だが。
「十日前に聞いたな、それ」
「でも、それは巴さんの独断だったわけですから、今日の会議で正式に決定したというわけです」
 なるほど。
 俺は口に出さずに納得した。そしてため息をつく。
 仕方ない、やってやろうではないか。
「ユーリさん!」
「おっと」
 少しボーッとしていたせいか、危うく生徒会室を通り過ぎるところだった。
「悪いカレン。さてと」
 俺はノック無しで扉を開けた。
「失礼するぞ」
 中では数人の生徒が仕事をしていた。
「やっと来たわね、ユーリ」
 扉の前で待ち構えていたリッカとエンカウントする。……いや、お前の顔見ても威厳も感じられないのは気のせいだろうか。
「失礼な事考えているわね、あなた」
「気のせいだ」
 視線を反らしながらお茶を濁した。
「まあいいわ」
 そういいながらリッカは拳を口の前まで持ってきて咳ばらいをした。
「話はカレンから聞いてる?」
「聞いた。まあ、仕事とはいえシャルルに押し付けてきたし、筋は通すつもりだ」
「別に大丈夫なんですけど……」
 そういったのはシャルルだ。謙虚な彼女は俺に迷惑がかからぬようにしたいのだろう。
「気にするな。エリーの命令だからどうせ逆らえん」
 一昨日の話だ。夜就寝前にエリーから連絡があった。内容はいたってシンプル。『やり残したお仕事は片付けておいてくださいね』だそうだ。……少し言い返してやりたかったが、そこは旧来の友人ということもある。少なからず恩義はあり、抵抗があったために俺は二つ返事で了承したのだった。
「それなら、気にすることはないわよシャルル」
 そしてリッカが俺に対して追い撃ちを掛ける。……よくこんなのと付き合おうと思ったな、清隆よ。
「さて、選挙まであと十日足らずといったところか」
 俺は話を転換させた。といっても、年に三回ある選挙のうち二回目が目前に迫っているということで、割とタイムリーな話題でもある。
「そうね。うちのクラスからは姫乃が立候補していたわね」
 俺の心の内を知ってか知らずか。リッカが話にのってきた。
「ああ、清隆の妹か。あいつも物好きだな」
「いえ、大体予想はつくんですけどね……」
 話す清隆はため息をつく。あー、なるほど。
「ふしだらな行為がないか妹からの監視がつくということか」
「まあ、そんなところでもあります」
 ふむ、まあ気持ちは分からなくはないが。
「そういえば、生徒会役員って、各クラス一人じゃないんですか?」
 清隆が聞く。まあ、一年目だ。知らないことも多いだろう。
「いや、そんなことはない。最大三人と言っても、各クラスから一人ずつ選出されるわけではなく、完全に選挙のみで選出される。だからクラスから一人出てしまえばそれで終わりというわけではないから、年によっては一クラスから三人ということもある」