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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

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Before da capo:confess 物語の始まり



 大分夜も更けてきた。時間を確認するのが億劫になってきたが、月の角度を見るに、もう三時くらいだろうか。
 おかしいな、昨日まで仕事だったのに。隣にカレンがいて緊張して眠れんよ。
 半年離れるだけでこれって、俺は初心なのか!?……心の中で思ってるだけでも俺の思ってることはカレンに筒抜けな気がする。
 とりあえず、だ。俺は思考を開始した。
 夜はまだ、長そうだ。……長そう……か?



   ◆   ◆   ◆



 俺とカレンの奇妙な関係が始まって早一ヶ月。
 俺は重大な決断を強いられていた。……もう既に十一月半ば。原因なんて分かり切っている。
「ユーリさん、あなたのクラスだけですよ。生徒会選挙候補者の擁立がまだなのは」
 優しく、エリーが諭すように言う。
 自身の受け持つクラスに向かう途中、エリーにばったりと出くわしてしまった。ちなみに出合い頭にため息をついて少し説教されたのは別の話だ。
「分かってるよそんなの……」
 どうやら他のクラスは候補者を立てて既に活動しているらしい
「そんなこと言っても、立候補してくる奴がいないんじゃ、立てようにも立てられないだろ」
 仮に他薦にしたとして、押し付け合いが始まるのは分かり切っている。それが人間の性というものだ。
「まあ、最悪候補者無しでもいいけど、出来る限り努力はしてくださいね」
「……了解」
 ………………。
「と、いうわけで、自薦他薦は問わん。誰か、生徒会役員になってみようというものはいないか?」
 授業後のホームルーム。俺はクラスに向けてそんな言葉を放った。多少ざわつくのは許容範囲内だ。
 とりあえず押し付け合戦に達した場合にのみ口を挟むことにする。
 しかし聞こえてくる物をまとめると、『面倒事はさっさと決めて早く帰りたい』と、そんな旨だ。
 だが俺は黙ったまま教卓に据え付けられている椅子に座って様子を見る。
 その時だった。
「ユーリさん、質問があります」
 不意に、一人の少女の手が上がる。カレンだ。
「なんだ、発言を許そう」
「もし生徒会役員になったとして、何かメリットはありますか?」
 ふむ、そう来たか。
「そうだな……。例えば、図書館島にある書庫の閲覧レベルの話はしたな」
 図書館島にある書庫には、閲覧レベル毎に見ることの出来る本が決められている。すなわち、閲覧レベルを上げないと見ることの出来ない書物があるということだ。
「閲覧レベルは、学年が上がることで自動的に一つ上がるというのを最初のオリエンテーションで話したと思うが、例外があり、生徒会役員になることで一つあげることが出来る。他にも、いくつかあるが……。正直全部説明するのは面倒臭いから、ここでは説明しない。これで満足か、カレン」
 俺は一番前の席に座るカレンに目を合わせる。
「はい、十分です。ありがとうございます」
「そんじゃ、それを踏まえて立候補しようと思う奴はいるか?」
 すると一つ、手が上がった。
「カレン、やってくれるのか?」
「はい。もともと生徒会には興味ありましたし、閲覧レベルが上がるのであれば、入って損はないかと」
 なるほど。そんな建前で……ねぇ。まあ、本音を聞く機会はあるだろう。そこで聞けばいいさ。
「そんじゃ、うちのクラスからの候補者はカレンでいいか?異論がある奴だけ挙手しろ」
 無論上がらない。人間は面倒臭いことが嫌いだからな。
「じゃあ、皆もカレンが当選できるようにサポートするように、頑張ってくれよ」
 十人十色、それぞれの返事がクラス中から聞こえる。
「それじゃ、今日は解散!」
 俺が手を叩くと、クラスにいた人間が一斉に席を立ち散開する。やっぱり早く帰りたかっただけか。
「あの」
 声に振り向くと、右隣りにカレンがいた。
「どうした、なんか聞きたいことでもあるか?」
「いえ、一つだけ」
 ……まさか。
「私は純粋に生徒会の仕事に興味を持っただけであって、裏で変な事なんて考えていないですからね」
 やっぱり読まれてたか。
「……悪かったな。とりあえず、当選できるように出来る限りはサポートしてやるつもりだ」
「お願いします」
 とりあえず、一ヶ月ほど忙しくなりそうだ。





 その日の夕方
「……俺、今日は報告だけのはずなんだがな……」
 なぜか俺は、学園長室で生徒会の仕事を手伝っていた。いや、俺も役員だよ。わかってたんだよこんなこと。
「そう言わないでよ、ユーリ。てか、それだけで済むと思った?」
 俺を呼び捨てにするこの世でただ一人の人物、リッカが俺を慰める。いや、さらに傷をえぐってくる。
「思わねぇよ。……でもさ、流石に会長飽きてきた」
「まだ年も明けてないのに早いわよ」
 そもそも俺が会長を引き受けたのは夏休み前だ。流石に早過ぎた。
「もっとも、あなた以外に同じ学年に役員がいれば、そんな感情もなかったんでしょうけどね」
「……そもそもエリーが悪いんじゃね?」
「それは否定出来ないわね。エリザベスも案外強引だし」
 ……よく思うんだが、あいつは何か隠してると思うんだ。いや、女王ってことだけじゃなく。それは俺らにすらわからないけど。
「それで、あなたのクラスからは誰を出したの」
 選挙の話だろう。そうでなけりゃここで話す理由はない。
「カレン・アルペジスタだ」
「へぇ。カレンをねぇ」
 ちなみにアルペジスタ前、現当主共にリッカと旧知の仲である。そもそも紹介したのは俺だ。最後にアルペジスタ公爵家を訪れた時、リッカも連れ立って赴いていた。その時、俺達はカレンの存在を知ったのだ。
 ……そういえば。
「そういえば、お前はアルペジスタの娘が風見鶏に来るってことを知ってたのか?」
「ええ。私はエリザベスから知らされてたから。どうやら、エリザベスはアルトさんから『娘をよろしく』って言われてたみたいよ」
 アルトとは現当主―つまり、カレンの親父さんだ。いや、今はそんなことはどうでもいい。
「"エリーから知らされてた"ってどういうことだ?」
「あれ、あなたは知らされてなかったの?……エリザベス、顔が広いから、カレンの事知っててもおかしくないわ」
「いや、そうじゃねぇよ。今更そこは気にしてねぇ」
 ……ということは結局。
「エリーが忘れてただけかよ……」
「いいじゃない。あなたは自力で辿り着けたんだから」
「そうだけどよ……」
 まあ、エリーを攻めても仕方ないか。
「……さて、これで終わり」
 リッカから托された書類整理も終わり、俺は席を立った。
「紅茶でも入れよう。何がいい?」
「任せるわ」
 ……しかしストックがアッサムティーしか無い。そういえば、カレンと初めてお茶をした時にこんなこと言われたな。
『……強いて言うならアッサムティーの方が好きです』
 今度お茶を買うときはアッサムティーも買っておかなければ。……あれ。
 俺、いつの間にかカレンが部屋に来ることを楽しみにしているのか?いやいや、カレンは年下だぞ。そんな馬鹿な話があってたまるか。
「……どうしたのユーリ、首なんか振って。知り合いじゃなきゃ怪しい人呼ばわりされるわよ」
「なんでもない。ちょっと考え事をしてただけだ」
 こんなのリッカに悟られたら絶対に笑い者にされる!なんとしても阻止しなければ。