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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
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D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

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Before da capo:Story of my life 失った理由



 エリーから禁呪に関する本を受け取り寮まで戻ってカレンに生い立ちを話そうとしたとき。俺はそこまで思い出した時、俺の隣で寝ているカレンが少し目を覚ました。
「うにゅ……ユーリしゃん……?」
「ありゃ、起こしちまったか?」
 少し頬を染めて寝むそうにしているカレンはすごく可愛い。ただ単に俺が惚気ているだけだろうが。
「起きてたんですか?」
「ちょっと、眠れなくてな」
 主にカレンのせいで。するとカレンは再度俺に抱き着いた。
「どうした?」
 心臓をバクバクさせながらそれを悟らせないよう平常心を装って訊いた。
「こうしていれば、ユーリしゃんも眠れるかなーって。私も同じ事してもらって眠れた覚えがありましゅし」
 寝起きで呂律が回っていないカレン可愛い。おっと、そろそろうざがられそうだ。
 ……しかし、これでは寝られる物も寝られなくなってしまった。仕方ないか。
 俺はカレンの頭を撫でて寝付かせながら、再度記憶の掘り起こしに取り掛かった。
 月はまだ、高い位置で俺達を見下ろしていた。夜はまだ、長そうだ。



   ◆   ◆   ◆



 俺が生まれたのは、イギリス、ロンドン郊外の街だ。もう地名もない、誰ももう覚えていない土地だ。また俺はその街最後の魔法使いの子供でもあった。
 その街では過疎化が進み、若い人間は魔法使いも含め都市部へ移り住み、残ったのは老いた人々か物好きだけだった。加えて魔法使いの子供が生まれにくくなっていたも事実だ。もともと魔法使いの多い街として名の知れた集落だったが、それももう通用しなくなっていた。
 俺は十歳になると同時に親とともにその街を離れ、ロンドンへと移り住んだ。
 それとほぼ同じ頃。俺の故郷が火の海に包まれた。"魔法使いの多い集落"というもう昔の事が今更になって紆余曲折を得て多くの人々の耳に触れ、それを恐れた人々によって火が放たれ、多くの住人が殺された。多く、という表現は正しくないな。その時集落にいた住人全員が殺されたのだ。
 俺の両親は心底驚いた。そして集落を見に行くといっていた。
 俺は引き止めた。だが彼らは頑として止めなかった。
 ついに俺は折れ、両親は集落へと向かった。俺を母さんの兄―俺の伯父に預けて。
 数ヶ月後、伯父の家に連絡が入った。伯父はすぐに俺に知らせてくれた。


『ユーリ、よく聞け。父さんと母さんが死んだ。どうやら魔法使いである事がばれて処刑されたらしい』


 俺の頭の中は真っ白になった。故郷も、両親も失い、俺は途方に暮れた。ただ母さんの家が名の知れた魔法使いの一族であったため、俺が魔法使いとして殺されることはなかった。
 もう亡くなってしまったが、伯父や親戚達には心底感謝している。
 そして俺が十八になったとき、俺も集落を訪れた。伯父達は危ないと引き止めてくれたが、もう八年も経っていたので大丈夫だろうと判断した。
 必ず帰る。そう言い残して俺は家を出た。
 故郷に着いた俺は、あまり驚かなかった。予想していた通りその地は荒廃し、ほとんど何も残っていなかった。残っていたのは瓦礫と元は家だった物、そしていくつかの遺骨。今となってはもう誰だか判別は付かない。だがみんな俺によくしてくれた。なので俺は、遺骨のひとつひとつに手を合わせ、黙祷を捧げた。中にはまだ子供であっただろう物もあった。
 俺は静かに憤りを感じていた。だが決して表には出さなかった。彼らには、そんなところ見せられない。そんなことをすれば、彼らに顔向け出来ないと思ったからだ。
 そして俺はあるものに気づいた。荒廃した土地の中で唯一半壊でほとんど原型を留めている家があった。
 俺はそこに入った。中には金庫らしき物があり、鍵がかかっている。
「これなら開けられそうか」
 俺はワンドを手にくるりと振った。するとカチリと鍵が開き、中を見るが出来た。
「なんだ、これ……」
 中を見た瞬間、目を疑った。そこには数冊の本が無傷のまま保管されていたのだ。中を見るかぎり、魔導書や禁呪に関する本ばかりだった。
 これは見つかったらすぐに処分されるだろう。そう思った俺は外に誰もいないことを確認するとすぐに本を鞄に詰め込み、金庫を施錠して簡単な魔法を使ってそこを離れた。
 少し名残惜しかったが、生きて帰るといった以上ここで立ち止まるわけにはいかなかった。だから俺は振り向かず一目散に逃げた。誰も追っていないのは分かっていた。だが逃げなければいけない。そう俺を何かが焚きつけていた。
 帰ってきたとき、俺が集落に向かってから一週間が経過していた。伯父達は俺を迎えるとすぐに食事などを用意してくれ、幾分か怒られはしたものの笑顔で『おかえり』と言ってくれた。
 俺は故郷で見たもの、見つけたものについて家族に話した。
彼らは神妙な面持ちで話を聞いていた。そしてそこで見つけた本を見せた。やはり中身は禁呪や失われた魔法に関する事が書いてあるようだった。
 皆はこれを王宮に献上すると言った。俺も勿論納得した。
 だが一つだけ、彼らに出さなかったものがあった。一冊だけ俺は隠し持っていた。
 翌日、伯父が一家を代表して本を持って王宮へ向かった。その後伯父が帰ってくるまで各々やるべき事をしていた。かく言う俺は隠していた本を読もうとしていた。それは禁呪に関する本だった。
 正直に言う。俺はすべてを取り戻したかった。故郷も、友達も、両親さえも奪われた俺は物寂しさを感じていたのだ。勿論、今の環境に不満を抱いているのではない。ただ両親に会いたい。それだけだった。
 このときになっても未だ俺は両親の死を受け入れきれていなかった。無論俺はこの目で確かめていない。それが俺をここまで突き動かしたのだろう。
 そんなときに見つけたのがこの本だった。<最後の贈り物(ラスト・クリスマス)>。それ禁呪の名だった。強大な力を与えられる代わりに術者の中の何か一つを失う。大雑把に言えばそんな禁呪だ。何を失うかわからない。そんな理由から禁呪とされていた。
 だが俺は躊躇わなかった。俺は本を開いた。中には禁呪を行うに当たって必要なものと手順、そして注意点が書かれていた。禁呪を行使できるのはクリスマスイブからクリスマスに変わる瞬間。今日は十一月三十日。行うまで、あと三週間ほど。奇しくも今日は俺の誕生日だった。
 夕方頃、伯父は帰ってきた。無事寄贈を終えた様で何よりだ。
 その後俺は部屋に監禁されてしまった。……理由は大体分かる。俺の誕生日パーティーをするのだろう。その準備に追われているのだ。まったく、こんなことしなくても俺は見に行かないのに。毎年そうしてるじゃないか。それでも皆心配な様で、誰かの誕生日となるとそいつが帰って来ないかエントランスで見張っていたり部屋から出てこない様にしたりと付き合わされる俺も大変だ。だがパーティーのときは皆が笑顔になるのでそれを見るのは俺も楽しい。だから仕方なく俺は付き合っている。
 一時間ほどすると俺は監禁から解放され、部屋を出ることが出来た。俺は真っすぐダイニングへと向かう。そこでパーティーの準備がされているはずだ。……案の定、というか予定通りそこでは準備がなされていた。中に入ると俺は『家族』の歓声やら拍手やらで迎え入れられた。