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アナザーワールドへようこそっ!  第二章  【041】

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  【041】



「そうか…………お前たちが、例の『特別招待生』か」


 ヴィクトリア・クライフィールドは、俺たちの正体を知ると、さっきの会話のときとは違い、表情が引き締まり、厳しい……というより、少し、深刻さが加味されたような表情に変わった。

「……よし。では、早速だが『生徒会室』へ来てほしいのだが都合は大丈夫か?」
「あ、はい……大丈夫で、」
「お前には聞いていなーーーいっ!?」
「えええええーーっ?!」

 ヴィクトリア・クライフィールドの問いにただ答えただけの隼人は、まさかの叱責を食らうハメとなった。

「わたしは……『シーナくん』に聞いているのだ。男子生徒は黙っていろっ!」
「……は、はい」

 隼人、とりあえず落ち込む。

「それで……シーナくん、どうかな? 今、時間は取れるかい?」

 ヴィクトリア・クライフィールドはシーナに対しては『最大限の配慮』を持って問いかける。

「は、はい……。じ、実は……ここに来たのは…………そのためでもあったので」
「ほう……? どういうことだい?」
「生徒会の方々がわたしたちのことを探していると聞いて、それなら自分たちから、直接、生徒会を尋ねようと思ったので…………」

 と、シーナは、はにかみながら答える。

「そうか…………えらいな、シーナくんは。わたしたちの手間を省くために、わざわざ、自分たちから尋ねてくるとは…………外見もさることながら中身も美しいと見える…………素晴らしい」
「そ、そんな~……そ、そんなつもりじゃないですから」
「ふふ…………照れてるその顔も美しい」

 二人のやり取り……というより、ヴィクトリア・クライフィールドの態度に俺とアイリはポカーン状態。

(な、なあ……ア、アイリ)

 俺は小声でアイリに尋ねた。

(あ、あのさ……ま、まさか…………生徒会長って、もしかして……その……そっち系の性癖の持ち主だったりする?)
(う、噂には聞いていたけど…………どうやら、間違いないかも)
(噂?)
(うん。ヴィクトリア・クライフィールドさんって……その……同性にしか興味がない方で、逆に男性には関心がないどころか、むしろ、毛嫌いしているらしい……とか)
(なるほど…………その噂はどうやら正しいようだな。でもさ、引き連れている生徒会の人って全員男性じゃない? あれは?)
(何でも、『女性』には『かわいそうだから』という理由で命令できないらしくって…………だから、生徒会活動をテキパキこなすために仕方なく男子生徒を入れたみたい。でも、その生徒会役員の男子は、彼女が何度も面接をして、能力が高い優秀な生徒で、かつ、自分に対して『絶対服従の男子生徒のみ』という条件で加入させたらしいよ)
(な……っ?!)

 す、すごいな。

 そうとう徹底しているな、ヴィクトリア・クライフィールド。

 ここに来て、まさかの『百合キャラ』とは…………。

(あ、でもね、副会長さんだけは、女子生徒らしいよ?)
(副会長だけ……? なんで?)

「それは、わたしが答えてやろう…………ハヤト・ニノミヤ」

 !?

 気づくと、俺とアイリのすぐ『真後ろ』にヴィクトリア・クライフィールドは移動していた。

 さっきまで、俺たちの『真正面』にいるシーナと話していたはずなのに…………いつの間に。

「わたしの『右腕』である副会長はな、仕事もできるし、気も回るし、何より…………わたしの幼なじみでな。そして二人とも同じように『男性が大嫌い』という共通点も持っているからなんだ。だから、わたしが君にキツイ当たり方をするのもそれが『仕様』だと思ってあきらめるように」

 仕様かよっ!

 て言うか、この世界(アナザーワールド)の人間から『仕様』なんて言葉が出てくるとは…………おそるべし、『仕様』の万能性っ!

「りょ、了解しました……」
「ふむ。中々、物分りがいいな…………よろしい、それでは、少しはマトモに会話するだけの権利を与えてやろう」
「ありがとうございます、会長」

 俺は、ヴィクトリア・クライフィールドの『忠実なる僕(しもべ)』と化していた。

『長いものには巻かれるっ!』…………絶対にだっ!


 それを見たシーナとアイリが、俺の姿を見てポカーン状態になった。

「あ、あそこまで完全に謙ることができるとは…………ある意味、すごいよ、ハヤト」
「お兄ちゃん…………妹としては、とても複雑な心境だよ」

 おいおい、そういうことは、せめて本人に聞こえないように小声でしゃべろよ…………まる聞こえじゃねーか!

 すると、ヴィクトリア・クライフィールドが、

「いやいや、シーナくん、アイリくん。ほとんどの男子は『女子よりも偉い』と勘違いしている奴しかいない中、この彼のような、少しは女性に対しての配慮ができる男性は素晴らしいと思うぞ。わたしは少し見直したぞ、ハヤト」

 と、ヴィクトリア・クライフィールドから意外にもフォローを入れられた。

 あれ? けっこう良い奴じゃ…………、

「とは言え、お前が『男』である以上、わたしの待遇がこれ以上良くなることはないがな……」

 ですよね。

「……とりあえず立ち話もなんだから、『生徒会室の個室』で話をしよう。わたしについて来てくれ」


 そういうとヴィクトリア・クライフィールドは今来た道を戻り、生徒会室へと向かった。