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水木 誠治
水木 誠治
novelistID. 51253
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クリーンエネルギー

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二十世紀の終わり頃から叫ばれ始め、それから一世紀近くたってもなお、人類の抱える由々しき問題は、エネルギー資源の枯渇だった。
 石油・石炭といった旧エネルギーが枯渇してしまったのは無論であり、前々から新時代のクリーンエネルギーと目されていた太陽エネルギーも、種々の問題から結局は実用化には至らなかった。現代の主要エネルギーは核融合によるものだが、過去に一度、高濃度の放射能を漏らすという致命的な不祥事をおこしてから、核融合発電に反対する声が日増しに高まり、いま以上に核融合発電を増大させるわけにはいかなかった。
 しかし、人類の困窮の日々も、偉大なる科学者の発明で終わりを告げることになる。
「――この装置が新しい発電機というのかね?」
 国務大臣は、かねがね新エネルギー開発に携わっていた有能な科学者に訊いた。
「そうです。これがクリーンで無限のエネルギーを生み出すのです」
「ほほう、さてどのように使うのだろう?」
「まず、その椅子にお掛けになって、これを頭に被ってください」
 と、科学者は国務大臣にヘルメットのようなものを渡した。
「ふむ、これでいいのか。でもどういうことだ。こんなことをして電気が得られるのか?」
「ええ、すでにもうかなりの電気エネルギーが得られていますよ」
「まさか体内の静電気を集めて――」
 続けようとする国務大臣を遮り、科学者は首を振った。
「これは、人間の邪な欲望を電気エネルギーに換える画期的な装置なのです」
「失敬な。それでは私が欲望の塊だと言っているようなものだ!」
「誰でも、たとえ聖人であっても欲望や邪心はもっているのです。百億を超える人間の欲望は無限といってよいでしょうし、欲望をエネルギーに換えるのですから、まさにこれは、二重の意味でクリーンと呼ぶにふさわしいエネルギーでしょう」

 しかし、その無限と思われていたエネルギーも、やがて枯渇する時代がくる。

 大きな風車が建ち並ぶ、のどやかで広大な草原。そこに小さな集落をつくって、邪心をもたない人類が自然との調和を保ち暮らしていた。
 もう莫大なエネルギーはいらない。
 風車の生み出すエネルギーで十分なのだ。


〈了〉
作品名:クリーンエネルギー 作家名:水木 誠治