ダチ
それからというもの、俺は 常男に何かと頼りにされた。ってことにしておこう。
頼っていたのは 俺の方だっただろうけど 常男はいつも『テル有りき』だと言ってくれた。本当のところ、常男のおかげで 静香とも仲良くなれた。
常男は、始めの自己紹介の時のように 何かと話に冗談を入れては 人を惹きつける魅力があった。静香もたぶん常男が気に入っていたんだと思う。
いつだったか常男が言っていた。
「常男に 静香じゃ ドラだろ。笑えるからやめてくれって伝えた」
「常男、おまえ 静香のこと振ったのかよ」
「振った…? とも違うな。テルと居る時間を邪魔しないで欲しいっていったら、静香が『わかった』って言った。だから これでいいんじゃないかな」
常男の話は、理解できるような、誤魔化されているような、かといって 深く訊くのも可笑しな気がした。
もしも 訊いて望まないことを言われたら、俺はこの愉しい時間を失うことになる。
それは、心底嫌だ。それだけは わかった。
俺は そう 俺たちは、出会ってから二年後、それぞれの進路を見つけ高校を卒業した。
俺は、大学に進学したし、常男も静香も別の大学へ進んだ。
気付けば、寺阪も俺と同じ大学に入ったらしく、学生食堂でばったり会ってからは 俺と行動することが増えた。
連絡を取り合って時間を合わせては、常男とよく遊んだ。静香ともキスするくらいまでの仲になった。青春?そんな言葉じゃ言い尽くせないな。とにかく愉しかった。
常男って俺の何だ?
こうして ブツブツと 語ってはみたが、だんだんわからなくなってきた。
「テルー」
小走りで俺に駈け寄ってきたのは 静香だった。
「お待たせ。 常男のところへ行こ…」
「ああ」
「おっと、待たせたね」
振り返ると、寺阪が立っていた。
「ジーパンなんて 呼んだっけ?」
「酷いなぁ、神戸君。でもジーパンっていうのも彼がつけてくれたんだよね」
「そうね。 寺でジ 阪が 阪急のハンで ジーパン。全然イメージじゃないけどね」
そう言って 静香は会う度に 寺阪をからかった。
向かうのは 常男の待つところ。
常男、今日はどんな冗談を言うんだい。
管付けて くだらないぞ・・・
常男、おまえを 神様なんかにしないからな。
― 了 ―