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ダチ

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俺のダチ、常男ってヤツの話だ。
べつに話すこともないけど、想いだしてしまったからな。独り言だけど聞いてくれ。

俺は 常男を友だちだと思うけれど、常男がどう思っていたのかはわからない。
出会ったのは、高校二年の連休明けだったかな。常男が 父親の都合とかで 俺の通う高校に転入してきたんだ。ひょろっと背が高いヤツだったけど 俺も背は学年でも高い方だったから さほど感じなかった。
そんな年頃に会ったのに 俺は常男に幼馴染のような親しみを感じた。何故だったのだろう? 考える時間もないくらい常男とは 一緒にいた気がする。

転校してきたその朝、小太り背低めそれに合った短めの脚の茶目っ気ある風体の担任といっしょに いや 担任の後ろから常男は教室に入ってきた。

一昨年から共学になった元男子校は、女子の数が まだクラスの半分には満たなかったが
教室の一角は 花畑のように華やいで見えた。そんな中から ひそひそと「ちょっとかっこよくない?」「背高いね」「彼女いるのかなぁ」「マジ好みかもぉ」囁く声がした。
いつもの見え見えの猫っかぶりが何処かに押しやられて、無防備に自分をさらけ出したような女子たちだった。
だがそれも、担任が教壇の中央に立ち、教室後ろの黒板を凝視して 小さく咳払いすると 一時的におさまった。
朝のホームルームの始まりだ。
この時だけは、女子もやんちゃな男子も 俺も何故か静かになるのは理解できない謎だった。
級長の寺阪が号令をかける。
「起立」
ガタガタガタと微妙にズレた幾つもの椅子を引き摺る音が教室に響く。運動場側の窓際一列のみ机の右側に立ち、俺たちは机の左側に立つ。
「礼」
寺阪の声は、響く。
「着席」
また椅子の音を立てながらおのおの椅子に座るが クラスみんなの視線は、担任の横の男子に向かっていた。
「はい、おはよう。今日からこのクラスに入った 今池君だ。じゃあ一言」
担任に促されて、上履き一つ分ほど前に出たその男子は、照れくさそうに視線をあげると自己紹介の声を発した。
「今日からよろしく。前の学校でバスケットやってましたイマイケルジョウダンです。あ、冗談です」
はぁ? クスリとも笑えないなぁ。 気付いたら俺だけ吹き出していた。
此処で漫画なら 『滝汗』とでも 吹き出しで付けたいところだ。
その男子は 振り向き黒板に白チョークで書いた。

作品名:ダチ 作家名:甜茶