Savior 第一部 救世主と魔女Ⅳ
「シスター・アンジェラは職務放棄して別の任務に関わるような方ではありませんよ」
ウィルツの思考を呼んだのか、マティアは言い聞かせるようにそう言った。だがそんなことは分かっている。全くうるさい奴だ。ウィルツは苛立ちながら、足元の石を蹴った。石は崖の縁を飛び越え、草原へ転がり落ちていく。もちろんアイツや魔女には届かない。
「・・・・・・帰るぞ。一度態勢を整える」
踵を返し、ウィルツは崖を後にする。その途中、生い茂る草の中でささやかに咲いていた緋い花を、八つ当たりするかのように踏みにじった。
緋い花は無残に潰れ、土にまみれて哀れにも萎れてしまった。
作品名:Savior 第一部 救世主と魔女Ⅳ 作家名:紫苑