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霧雨堂の女中(ウェイトレス)

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と言った。

 ※

そんなわけで、再びここ霧雨堂には閑古鳥様が訪れた。
私はまた窓際に向かい、外の景色を見る。
鈍色の空はどこまでも続き、そこに晴れ間が見える様子もない。

街を行く人の数は変わらず少ない。
だけど彼らの共通点は、一様に、口元を覆う様々なマスクが被せられていることだ。
以前はそんなものはなかったし、それが普通で、マスクは異物で、明らかに目立つ『社会からの仮面』だった。
だけど、今は一年中だってそれを取る必要はない。
取ることを求められることもない。
ニュー・ノーマル。
果たしてそれがいつまでそうなのかは、誰にも分からないけれど。

『こうなってしまった世界』で、
『彼女の美しさ』を理解しない彼こそが、
『この普通』の中で、彼女とともに歩く一番の資格を持っているのかもしれない。

本当のことを言えば息苦しいし、いつまでも好きにはなれないけれど、仮面(マスク)をつけることが誰かのためになることも、きっとあるのだ。
理解と寛容、そして仮面のその向こう。
私は自分のマスクのことをちょっと考えて、ふとマスターの言葉を思い出した。