霧雨堂の女中(ウェイトレス)
――瞬間、私は我に返った。
「やめて!」
そして私は男達に飛びかかった。両手を乱暴に振り回して瓶を口元から払おうとする。
こんなのは間違っている。
普通のお酒の飲み方なんかじゃ絶対にないし、命に関わってもおかしくない。
結果、瓶はふたりの口からすっぽ抜けた。
だけどふたりともしっかり掴んでいたからか、床に落ちて割れるような事はなかった。
しかし酒はそのままある程度床に振りまかれ、店内にはぶわっと一気にお酒の甘い臭いが充満した。
ふたりは唖然とした表情を浮かべた。
そして男はそのまま恨めしげな目つきを浮かべ、私の方へと向けてきた。
だから、私は、
作品名:霧雨堂の女中(ウェイトレス) 作家名:匿川 名