花は咲いたか
降伏で命を助けられる者とそうでない者が出てくる。たとえ命が助かっても、拘束され獄中生活を送る者も出る。戦の終結の先にはどのような運命が待ちかまえていようと、ここ五稜郭にいる男達は覚悟を決めているはずだ。
どこでこの戦いを終わらせるか...。榎本は考えていた。
もう雪は降らない。新政府軍が大挙して攻めて来るのは時間の問題だった。
土方は称名寺にいた。
新選組の屯所だ。
野村利三郎の墓は、新選組の屯所であるこの称名寺がふさわしかろうと建立した。
陸軍奉行並介添役として、常に土方の傍らにあった利三郎がいなくなった。
新選組を作った時から数え切れない、生と死を見てきた土方だったが、京での新選組隊士らとは違う意味で、失った存在は大きかった。
建立した墓の前で長いこと物思いに浸っていたが、意を決したように土方は立ち上がった。いつまでもここでこうしていても利三郎は喜ばない。
(近藤さん、野村がそっちへ行った。よろしく頼むよ)
空を見上げながら心の中で近藤勇に話しかけた。
馬の手綱を取ると、土方は五稜郭へと馬を向けた。
その日の夕方、五稜郭に一報がもたらされた。
乙部に、新政府軍上陸。
第六章 終わり