小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

SAⅤIOR・AGENTⅡ

INDEX|163ページ/172ページ|

次のページ前のページ
 

エピソード15,最大の決着



 兄貴達がいなくなってから数時間後。
 すでに戦意を喪失したエイリアン・ハンター達は全員病院に搬送された。
 私達は塩田さんを保健室で休ませていた。本当なら一緒に病院に送って検査した方が良いんだろうけど、里中先生に無理を言ってレンの『恵に胸を張って会いに行く』と言う言葉を信じて保健室で待つ事にして貰った。
 死んだように眠る塩田さんの顔を横で私は見ていると、そこへ自販機で飲み物を買って着てくれた里中先生がやって来た。
「大丈夫よ、ただ眠っているだけだから、しばらくすれば目を覚ますわ」
「はい、でも……」
 私は口ごもった。
 心配するなって方が無理だ。
 塩田さんは殺されそうになったり騙されたりと、私以上に異星人に振り回されている……、絶対レンと会わせてあげたかった。
 ただ私には何も出来なかった。
 兄貴や不破さん達みたいに戦う力は持っていない、ただ少し成績が良いだけの地球人だった。
 学校の成績が良くても私が出来る事はただ祈るだけだった。
 するとその時だ。塩田さんの手に力が入った。
「……うっ」
「塩田さんっ!」
 塩田さんは低く唸った。
 意識が戻りつつあるんだろう、私は慌てて塩田さんの手を握り締め返した。
 すると塩田さんはかすれそうな声で言って来た。
「……レ……ンっ」
「……こんな時にまで」
 私は顔を顰めた。
 こんな目に合ってまでレンの事を考えている、何でそこまで出来るのか分からなかった。
 こういうのは『嫉妬』って言うんだろう、私の心の中に蟠りのような物があった。
 私は塩田さんの事が羨ましいのか悔しいのか分からなくなった。
 私は騙されたからって異星人達を疑ってしまった。幸い大事には至らなかったけど、それでも私が友人達を疑ったのは事実だった。全ては私が弱かったからだ。
 私が拳を握り締めているのが目に入ったんだろう、里中先生は言って来た。
「こんな時だからこそよ」
「えっ?」
「レンは幸せ者よね、こうやって待っててくれる人がいるんだから……、勿論タクミ君も」
「は? 兄さんが? ……何言ってるんですか?」
「あら、帰って欲しくないの?」
「そ、そんな事……、そりゃ帰ってくるなとは言いませんけど」
「そう、じゃあ、今回は笑顔で迎えてあげたら?」
「は? ええっ?」
「たまには良いじゃない、お帰りって言
 っても……、妹さん、今まで言った事ないんじゃないの?」
「あっ!」
 私は思い出した。
 兄貴が帰って来てからは『おはよう』とか『じゃあね』とか素っ気無い挨拶をした事はあったけど、『お帰り』とは一言も言った事は無かった。
 確かに言ってみるのも悪くは無いかもしれないな……、私が肩の力を抜いた時だった。突然里中先生が言って来た。
「やっと笑ったわね」
「えっ?」
「妹さん、さっきまで暗かったから……、どうせ異星人を疑った事を後悔してたんじゃないの?」
「えええっ?」
「……やっぱりね」
 里中先生は両肩を落とした。
 この人には本当に心の中を見透かされてる気分だ。
「妹さんは頭が良過ぎるのよ、だから頭の方が先に動いてしまうのね」
「はぁ……」
「ただ勘違いしないで、疑う事は悪くない、ほんの少しだけ心を開くだけで良いのよ」
「里中先生……」
「だから今回は言ってあげなさい」
 里中先生が言うと私は頷いた。
 上手く言えるかどうか分からないけど、私は今回は言ってみる事にした。
 それが出来れば少しは強くなれるかも知れなかった。出来るかどうかは別だけど……