ろじゃく
「おれの、いるべきところに」
その後の結末は、百二度目の治安維持にして、路尺の警備史上初の終え方をしたのだった。
街に住む人達へ向ける自身の心を確認し、守ることを決意し全速力で現場に着いた路尺が目にしたものは、女性が今にも襲われる所だった。それは服を掴まれ、あわや組み伏せられるかと思われる瞬間だった。
路尺は現場に飛び込み、大声を上げて両者の間に割り入った。不意打ちにも等しく、そのままとび蹴りに移行した路尺の襲撃は見事、四人の男共に威力を消され受け止められた。そして仕返しとして、報復として、殴る蹴るの暴行を雨のように浴びせかけられた。意識も絶え絶えになったとき、胸倉を絞める悪党の手が不意に離れ、次いで来る打撃も何もなくなった。わけも分からず路尺は地面にぺたりと折れ込んだ。
「まったく、邪魔してくれちゃって。あんた」
瞼が腫上がって視界が狭いが、その声が細高いもので、ここが路地裏で、誰も来ない場所であることを考えれば、男四人を打ちのめしたのは、襲われていた女性自身であったことは、疑いようもなかった。
思い起こせば、確かに不自然なのである。路尺が路地裏で彼女らを発見し、そこから逃亡し、現場に舞い戻ってくるまでに、どれだけの時間がかかったかといえば、高級レストランで一度食事をし終えるぐらいである。その間、体力の少ない女性が、男四人を相手に逃げ続けられるというのは論理があわない。
路尺が、ではこの女性に者かと問い、それに答えた女性と路尺がこれからどんな風になるのかはまた、別の話である。
また、路尺がこのお話で街の人々に何を思ったのかというのは、語り部の僕が言おうとすると、彼は目を剥いて止めてくるので、止めておこうと思う。でも、後日談としてある程度それについて掠るようなことを言うとするならば、路尺は今、職場の上司達とよく酒を飲みに行っているし、最近ジムにも通いだしている。看護師の女の人には、よく花を贈っているらしい。
また連絡が入ったようだ。路尺は今日も、街を警備しにいく。