Syma-シマ-
白いカーテンから差し込むやさしい陽射しがこの殺風景な部屋を照らす。
「ふあぁ…」
それに気づき目が覚める。
両親がいなくなってからと言うものの、この家は異様な程に静けさを増していた。
そんなことを考えながら、寝返りをうとうとした時。
「ん、ん…もう…何も食べられないよ~」
そんな殺風景な雰囲気を吹き飛ばすような、甘ったるい蜂蜜色の声が聞こえた。寝ぼけていたせいもあり、顔がはっきりと見えない。
「とういうか……」
朝っぱらからなんだこの綿菓子詰め放題のような甘ったるい声は
「もしもし、どなたですか?」
「ん、ん…」
その人物に話しかけたところで一向に目を覚ます気配がない。
「さて、朝食でも食べにいくか…」
朝食を食べるためにベッドから降りようとしたときだ
「ん、ん…!ソニック!なんでここにいるの?」
俺がベッドから降りると同時にどうやら隣のベッドで寝ていた人物が目を覚ましたようだった。
その人物の声に聞き覚えがあった。
俺、中尾遂(なかお・とぐる)をソニックと呼ぶ人物は戸島湖希(としま・こまれ)以外いない…。
「って!コマレかよ!それはこっちの台詞だ!」
「なんでここにいるんだよ?」
「なんで、じゃないわよ!」
「まぁいいわ。これからずっとソニックって呼ぶから!」
「帰るから、じゃあね」
そういってコマレはそっぽを向いた。
まぁ…。俺だからこれだけで済んだのだろう。
だけどどうして『コマレ』が俺の部屋にいるのだろう…。
少し疑問を浮かべながらも朝食に向うことにした。
軽い足取りで部屋から出、すぐ近くにあるエレベーターに乗り一回に向う。
その途中にアクシデントが起きた。
3階から1階に降りるときに予想もしてない場所でエレベーターが止まったのだ。
と同時に。
「ソニック…ほっていかないでよ…」
その声はそっぽを向いた『コマレ』の声だった。
「なんだよ。お前、家に帰るんじゃなかったのか?」
「そのことなんだけど、昨日、ソニックの家に来てて…」
「そのままベッドに寝てしまったの。」
「だから私が悪い…」
「話の事情はわかった。で、お前も朝食でも食べていくか?」
「そうするわ」
一旦、話が終わったところで、1階のボタンを押し、エレベーターのドアを締める。
…どうせ、これから朝食を食べ、この家からもオサラバだし、一応、コマレにも話しを振っておくか…。
「俺、今日からこの家を出て行って」
「の学校に転校するから」
「そうなの?今から?」
「今から…お前の顔を見られなくなるのも寂しいけど…」
「ん…、それじゃ、私も行くわ」
間が悪いことにチケットは俺の分しかない。
コマレの期待を裏切るのも癪だが仕方がない…。
「チケット、俺の分しかないんだ…」
「ごめんな…」
素直に謝った。
「チケット?それなら私も持ってるけど?」
そう言ってコマレはポケットからチケットを取り出した。
「これのこと?」
「それだよ!なんでお前が持ってる?」
「昨日、チケットが余っているからってただでもらったけど…」