逃走兄妹
男はスマートフォンを少しだけいじりまた眠るように倒れた
〈動けない、迎えに来てくれ
場所は…〉
〈(現在地の地図の写真)〉
〈飲むものと何か食うものも頼む〉
勝手な人だなぁ…
私は携帯に届いたメッセージを確認するとベッドから抜け出して服を着る、お別れも一応言っとこうかな…
「お金ありがと、もう行くね
ホテル代もよろしくー」
「ちょっと待ってくれ、連絡先教えてくれないか?また会いたい」
「ごめんね、あまり一つの場所に長いこと居ないの、旅人だから」
あなたの声、気持ち悪くて好みじゃないしね
ゴミの腐った臭いが鼻につく、肌にまとわりつくような不快さと粘つく汗の感触、もう3日ほど風呂に入ってない、この辺りに銭湯はあったかな…
「お兄ちゃんまた喧嘩したの?
ダメだよおにーちゃん弱いんだから」
生意気そうな妹の声、完全にバカにされてるのは長年いれば流石にわかる
「うるさいな…ちょっと小突いただけでキレてきたんだから仕方ないだろ…それよりも何か買ってきてくれたか?こんな顔じゃコンビニもいけねぇ」
「おにぎりとコーヒーでいいよね
あと話逸らさないで、どうせまたスリに失敗したんでしょ、どっちかが警察捕まったら私たちの旅、もう終わりだよ?お金も昨日渡したばっかじゃん、ギャンブルやめてってのも何回も…」
またいつもの話が始まったので俺はおにぎりとコーヒー牛乳を適当に腹に入れる、次は風呂だな
「お兄ちゃんまだ死なないでよ、まだ私たち…」
「なぁ、いい加減病気になりそうだ、風呂行ってからゆっくり話そうぜ」
「いいよ!さっき行ってたホテル凄くお風呂綺麗だったからそこいこ!そんな顔じゃ銭湯も行けないよ!」
ものすごく…行きたくないな…