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アナザーワールドへようこそっ!  第二章  【033】

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  【033】



 俺、シーナ、アイリの三人は、男子寮・女子寮双方で『生徒会』による『特別招待生捜索』から逃れるため、学校(アカデミー)から外に出て、『緊急生徒会対策会議』と言う名の『お茶会』をすることにした。中央区(セントラル・エリア)に入ったときは、いろいろと町中を見物することもできなかったということもあり、俺とシーナはけっこうテンションが上がって周りをキョロキョロ見ては、いろいろと質問攻めをした。

 おかげで、アイリは俺たちの質問攻めに少しイラッとしたらしく、

「お二人様…………支払いは『中央区(セントラル・エリア)案内分』も追加となりましたので、『二割増し』となります。よろしくお願いします」

 と、『アイリ金融』の厳しい一面を覗かせた。

 とは言うものの、やはり、俺としては『地球』の科学技術と比べて、どう見てもこの世界(アナザーワールド)のほうが進んでいるということにショックが大きく、つい、アイリに質問攻めをすることになってしまったのは申し訳ないと思っている。

 例えば、この中央区(セントラル・エリア)で走っている車は、皆、道路から少し『宙に浮いて』走っている。はっきり言って、中央区(セントラル・エリア)の案内とは違う質問ではあるが、そのことをまず何よりも先に質問をしてみた。すると……、

「本気で言ってんの? あんな『普通の車』くらい、南地区(サウス・エリア)にだって走っているでしょ? えっ? 無い? そうなのー? なら、しょうがないな…………あれは『フロートカー』って言って、『風属性』の『浮遊魔法』を『マギカライト(魔法封入石)』に封入させ、その力を出力させて走らせている車よ」

「マギカライト(魔法封入石)?」

「えーーっ!? マギカライト(魔法封入石)も知らないの?…………ふう、わかったわ。でもね、わたしは、昨日、あんたたちと出会ってから、ずっと聞きたい事が山ほどあるの。だけど、今はとりあえず、聞かないで置いてあげる。後から……『緊急生徒会対策会議』が終わったら、今度は逆にわたしからあなたたち二人に質問があるから、覚悟してなさい」

 と、アイリは、いじわるな笑顔で、俺とシーナを脅迫し、それから改めて『マギカライト(魔法封入石)』の説明を始めた。


「『マギカライト(魔法封入石)』……それは、『魔法効果を封印できる石』のことで、まあ、当たり前の話だけど、わたしたちの生活の中で使われている生活用品にはすべて、この『マギカライト(魔法封入石)』を利用しているでしょ? 同じように、この『フロートカー』にも使われているってこと。ちなみに『フロートカー』の燃料である、この『マギカライト(魔法封入石)』には『風属性の魔法効果』である『浮遊魔法』を封入してあるの。つまり……あの『生徒会長』……『ヴィクトリア・クライフィールド生徒会長』の『クライフィールド家』がそれを『独占提供』しているってわけ。だから、つまり、『クライフィールド家』は超お金持ちってことっ! どう? すごいと思わない? クライフィールド家って?」
「そ、そうだね……」

 どうやら、アイリ的には『クライフィールド家』は『憧れ』のようだった。おそらく『超お金持ち』ってとこだろうな~。

「まあ、他にも『マギカライト(魔法封入石)』はいろんな生活用品に組み込まれているけど、どう組み込まれているかまではわからないけどね。理由は、昔は『マギカライト(魔法封入石)』が組み込まれているのが目立つように作られていたみたいだけど、今は、あまり目立つと商品が売れないみたいだからって理由で、今ではパッと見くらいじゃわからないようになっているけどね」

 なるほど。

 ありそうな話だな。


――それにしても。


 今回のアイリの話で、少し、この世界(アナザーワールド)の文明の一端を知ることができたのはよかった。

 まず、この世界(アナザーワールド)で使われている『技術』は、『科学』ではなく『魔法』であり、その『魔法』が、いろいろと生活用品の中に組み込まれているということ。

 その『組み込み方』が、『マギカライト(魔法封入石)』という『魔法効果を封入できる石』に『魔法効果』を封入し、その『マギカライト(魔法封入石)』を生活用品に組み込み、出力させて利用するということらしい。

 それはつまり、この世界(アナザーワールド)で、『マギカライト(魔法封入石)』は、『物』を動かす『動力源』ということであり、地球で言うところの『石油』とか『ガス』といった『燃料の役割』を果たしていることになる。そして、その『動力源』の内、『宙に浮く車』である『フロートカー』の動力源として使われている『マギカライト(魔法封入石)』には、『風属性の浮遊魔法』が封入されていて、それを『独占提供』しているのが、あの『ヴィクトリア・クライフィールド生徒会長』の『クライフィールド家』ということ。

 こうやって聞くと、あの『生徒会長』の物言いも納得がいく。

 おそらく、生まれつきの超エリートなのだろう。

 おまけに『天才児(ニューエイジ)』ときている。


 まさに『鬼に金棒』である。